コンサルティング物語

コンサルティング物語
「価値観の醸成」

EME「コンサルティング物語」は、コンサルティングの現場を物語風にアレンジしたものです。
コンサルタントの役割を身近に感じて頂けるように、EMEの新しいチャレンジです。

小さな実験が会社を変える
-少しずつ常に変革-

F社の事例 その1

「チャレンジ精神が足りない。」

弊社にご相談にこられた、社長の言葉です。F社は、年商30億円の食品メーカーです。F社の社長は、市場のニーズは日々変化している。我々も日々変化しなければ生き残っていけない、という強い危機感を持たれていました。そこで、毎日のように、新しい売り方、新しい仕事の仕方をやるように言っているが、社員はいつまでも同じ売り方、同じ仕事の仕方をしている。なんとか社員に、チャレンジ精神を植え付けたい。どのようにしたら、チャレンジ精神を植え付けることができるのだろうか。

このようなご相談にこられたのです。

コンサルタントは、自分の経験を基に、次のような話を始めました。

(コンサル)
「今から15年以上前になりますが、私が、洋酒メーカーに勤務したとき、上司から『小さな実験を3ヶ所以上でやりなさい』と、口すっぱく言われました。なぜだか、判りますか。」
(社長)
「・・・」
(コンサル)
「例えば、1件の酒販店さんで、ある商品のキャンペーンを提案しました。提案が認められ、キャンペーンを実施したところ、50ケース販売できたとしましょう。その結果、情報として判ったことは、一つのキャンペーンに対して、50ケースの商品が販売できたという事実だけです。ところが、同じキャンペーンを3ヶ所の酒販店で実施したところ、1件の酒販店さんは50ケースの販売でしたが、他の2件は100ケース売れたとしたら、あるいは、他の2件は20ケースしか売れなかったとしたら、50ケースの意味がどのように変わるでしょうか。前者の場合は、50ケースしか売れなかった、50ケースです、後者の場合は、50ケースも売れた50ケースになりませんか。」
(社長)
「同じ50ケースでも、意味合いがまるで違ってくる」
(コンサル)
「そのとおりです。そこで、疑問が湧きませんか。」
(社長)
「???」
(コンサル)
「前者の場合だと、なぜ50ケースしか売れなかったのか。後者の場合だと、なぜ50ケースも売れたのか。他の酒販店と何が違ったのか。このような疑問が湧きます。そこで、原因分析が始まるのです。立地が違ったのか、酒販店の業態が違ったのか、販売員のレベルに違いがあったのか・・・、これは重要な情報です。そして、その原因分析情報は次の戦略に活用されるのです。例えば、○○タイプの酒販店には、××の販売促進が効果的ではないかという仮説がつくられ、仮説を検証する取組が行われるのです。」
(社長)
「先生のおっしゃる事は、よくわかります。しかし、現実的には、おっしゃるような差異が明確になって、戦略的に活用できるのでしょうか。実験ばかりやって、成果が見えなければ、社員の取組が無駄になって、かえってチャレンジ精神を失わせる事にならないでしょうか」
(コンサル)
「社長のご心配はもっともです。それでは、実際に私が経験したことをお話ししましょう。」

社長は、コンサルタントの話になかなか興味を示されません。そこで、コンサルタントは、自分の体験談を話し始めました。この体験談については、次回、お話します。

F社の事例 その2

なるほど、メニューの書き方が違ったわけですか。

社長は、コンサルタントの体験談を聞いて、小さな実験に対して興味を示し始めました。

(コンサル)
「20年前、焼酎ブームが始まったのを覚えていらっしゃいますか。その当時、私の在職していた洋酒メーカーでは、焼酎を製造する免許を持っていませんでした。焼酎に対して、価格的に対抗できるのは、ウイスキーのT銘柄だけだったのです。そこで、洋酒メーカーでは、焼酎のソーダ割に対抗して、T銘柄でハイボールキャンペーンを行なったのです。
その当時、私は東京支店に在籍していました。上司の口癖を受けて、居酒屋を対象に“T銘柄1本キープしていただくとソーダを1本プレゼントする”T銘柄のハイボールキャンペーンを3箇所で行なったのです。その地域は、
S地域(町工場が多く、ブルーカラー層の市場)
U地域(ターミナルの繁華街)
K地域(学生や若者の多く集まる繁華街)
でした。 2週間5ケース(60本)を陳列して販売してもらいました。どの地域が最も販売できたと思われますか?」
(社長)
「それは、ブルーカラー層の多いS地域だろう。」
(コンサル)
「実は、私もS地域対策でキャンペーンを企画したのです。そして、正直に言うと、上司から3箇所以上で小さな実験をしなさいと言われていたので、U地域、K地域を追加したのです。結果は、S地域8本、U地域14本、K地域34本という実績でした。なぜだか判りますか?」
(社長)
「・・・」
(コンサル)
「実は、私も判らなかったのです。そこで、納入している酒販店に、理由を聞きに行ったのです。」
(社長)
「それで、何が判ったのですか。」
(コンサル)
「酒販店さん曰く “小野さんは、それぞれの地域でチューハイをどのように書くか知っていますか”
・・・
“S地域は酎ハイ、U地域はチューハイ、K地域はCHU - HI、この違いだよ”
??? 私には、さっぱり判りません、そのココロは何ですか
“S地域は、ブルーカラーで酒を飲み慣れている客が多い。従って、T銘柄が、ウイスキーで一番安い銘柄だと知っている。また、銘柄の変更にも保守的だ。一方、K地域は、若者が多い。T銘柄が、ウイスキーで一番安い銘柄だということも知らない。美味ければいいじゃん、のノリで銘柄の変更にも抵抗がない。”」
(社長)
「なるほど、地域の特徴がメニューの書き方によって表されているのですか。」
(コンサル)
「そうなんです。もし、小さな実験をしていなければ、このようなことに気づかず、“S地域では、8本しか販売できませんでした、選定した地域が間違っていたようです”程度の報告しかできなかったでしょうね。」
(社長)
「小さな実験をやれば、気づきが深まる・・・」
(コンサル)
「そうなんです。そこで、私は3つの地域の特徴、キャンペーン結果、仮説として酒販店さんから聞いた背景に基づいて、ハイボールキャンペーンは、若者の集まる地域(CHU - HI地域)を中心に展開する提案を、マーケティング本部に報告したのです。」

この提案を受けて、マーケティング本部がどのように動いたか、そして、その結果については、次回報告させていただきます。

F社の事例 その3

小さな実験を繰り返すことは、チャレンジを成果に結びつけることなのか

F社の経営者は、小さな実験を繰り返す意味を理解されたようです。 一方で、チャレンジを成果に結びつける仕組づくり、失敗を認める風土づくりなど 課題が山積していることにも気づかれました。しかし、新しい体質への変革に、踏み出した一歩は大きな前進です。

(コンサル)
「このあとのマーケティング部門の動きに、正直、驚きました。 仮説として報告した“CHU - HIとメニューに書かれている地域”を探すのです。つまり、営業マンを使って、仮説の検証に動いたのです。すると、K地域以外に A地域、Sn地域、Si地域、R地域など (銘柄変更に抵抗のない)若者の集まる地域が抽出されたのです。 このあとのT銘柄のハイボールキャンペーンは、その地域に重点的に実施され、逆に、S地域のような“酎ハイ”地域では実施を中止したのです。その結果、T銘柄は、前年対比300%アップの成果に結びついたのです。一方、コストは、当初予算より大幅な削減だったと聞きました。このような体験をどのように感じられましたか。」
(社長)
「う~ん、非常に興味のある話だけれども、どうも、上手くできすぎている気がするなぁ」
(コンサル)
「おっしゃる通りです。この話で終わってしまうと、一つの成功事例の説明でしかありません。このT銘柄の成功事例をモデル化しなければ、自社に応用することはできません。」
(社長)
「モデル化するとは、どういうことか」
(コンサル)
「T銘柄の成功事例を一般化して、だれでも使える考え方や仕組として整理することです。まず、
  1. 小さな実験(同じキャンペーン)を3箇所(S・U・K)で行ないました。
  2. 同じキャンペーンを行なったにも関わらず、成果に差(8・14・34本)が現れました。
  3. 成功した地域では、成功した要因(CHU - HI:銘柄変更に抵抗がない)を仮説として設定しました。一方、成功しなかった地域でも、成功しなかった要因(酎ハイ:銘柄変更に抵抗がある)を仮説として設定しました。
  4. 成功した要因仮説に対して、仮説検証(CHU - HI地域は、銘柄変更に抵抗のない消費者が集まっているか)を行なっています。
  5. 成功要因のある地域にだけ資源を集中する。一方、成功要因のない地域では、新たな方法を模索するか、または資源を投入しない(T銘柄の例では、資源を投入しませんでした)。このような、意志決定と行動変革を起こしました。
  6. 新たな方法を模索する場合は、あらためて小さな実験を繰り返す。このようなモデルができるのではないですか。」
(社長)
「小さな実験を繰り返すことは、チャレンジを成果に結びつける仕組をつくることなのか」
(コンサル)
「ただ、仕組をつくっても絵に書いた餅に終わります。チャレンジすることが良いことだという組織風土を醸成しなければなりません。最近、新しい販売促進の方法にチャレンジしたが、思うような成果に結びつかなかった、という事例はありませんでしたか。」
(社長)
「営業マンが、新しい商品を販売するために、販売促進の企画をしたが、コストを掛けたにもかかわらず、成果はさっぱりだった例があったよ。」
(コンサル)
「その時、報告にきた営業マンに対して、どのような対応をなされましたか。」
(社長)
「思わず、このコストをどこで回収するのか… といってしまったなぁ」
(コンサル)
「チャレンジを奨励して、しかし、評価は実績で行なう。どこか、矛盾していませんか。まず、営業マンに対しては、チャレンジしたことを誉めるべきですね。また、企画を承認した方がいらっしゃる訳ですから、上司に対しては、承認するときのチェックが甘くなかったのか、また営業マンに対しては、なぜ成果がでなかったのか、次に繋がる振り返りをさせることが必要です。」
(社長)
「私自身が、変わらなければならない、ということか…」

社長は、最も大切なことに気づかれたようです。この気づきから、どのような仕組を構築していったのか、次回報告いたします。

F社の事例 その4

そんな、身近なことから始めるのか。

社長は、自分自身の意識改革・行動革新だけでなく、営業マンの意識改革・行動革新の必要性を痛感するようになりました。しかし、営業マンの意識改革・行動改革をどのように進めればよいのか、社長は、まだイメージすることができません。また、新しい課題が生まれてきたのです。そこで、コンサルタントはひとつの提案を行いました。

(コンサル)
社長の会社では、営業マンは、日報を書いていますか
(社長)
もちろん日報を書かせている
(コンサル)
営業マンの書いた日報を、社長は見ていますか。どのような内容が書かれていますか。
(社長)
見てはいるが、ワクワクするような内容が少ない。どこどこの得意先に○○商品を幾らで、△△ケース販売した、とか、どこどこの得意先に□□の提案を行った、とか、客観的な状況ばかり書いてある。得意先から、☆☆の依頼を受けました、とか、得意先から※※ができないかという問い合わせがありました、等 得意先からの依頼や要望の方が、はるかに読んでいて楽しい。すぐに、実行しようと思う。
(コンサル)
営業マンの活動報告からは、すぐに取り組みたいという内容が少ないということですか。
(社長)
残念ながら、そのとおりだ。
(コンサル)
社長に対して、ひとつの提案があります。日報を「チャレンジする日報」に変えましょう。
(社長)
「チャレンジする日報」に変えるということは、どういうことなのか。
(コンサル)
その前に、失敗と成功の考え方を整理しておきましょう。営業には、得意先に対して、必ず訪問目的があるはずです。たとえば、○○商品を▽▽ケース販売する、とか、競合他社の情報を聞き出すとか・・・。その目的に対して、目的を達成あるいは、それ以上の成果があれば、成功情報、その逆に、目的を達成できなかった場合を失敗情報と呼ぶのです。
(社長)
どうも、よくわからないなぁ。
(コンサル)
目的意識のない、達成志向の低い営業マンは、絶対にチャレンジしません。従って、まず、日報を通じて、営業マンに目的意識を持たせるのです。そして、目的を達成するために行った行動は、例え、成果が出なくても、そのやり方が目的達成に適していなかったことが分かったわけですから、成功なんですよ。私のT銘柄のウイスキーのS地区への販売のように。
(社長)
我社の営業マンは、失敗ばかり繰り返しそうだ。
(コンサル)
失敗でも、同じ失敗を繰り返すのは、学習能力のない証拠です。この人財は問題です。成長意欲のない人ですから。一方、学習能力を発揮するために、T銘柄の小さな実験のように、同じ実験を複数拠点で行う、目的を達成できなかった要因を分析する、などの指導が必要です。
(社長)
受注間違いをして、得意先に叱られる、これも失敗ではないのか。
(コンサル)
目的を達成するために行った行動が失敗事例、本来、やらないといけないことをやらなかった行動はクレーム事例です。失敗事例とクレーム事例も明確に分ける必要があります。要するに、目的に対して、意図を持って行動しているかどうかなのです。
(社長)
なるほど、そうすると日報の書式も変えなければならない。目的-行動-結果-振り返り、この4点セットが重要だということだな。

このようにして、F社では、新しい日報システムがスタートしました。F社では、順調に導入が進んだのでしょうか。導入の苦しみについては、次回、ご報告いたします。

F社の事例 その5

一向に営業マンの意識が変わらない

1ヶ月後、コンサルタントの日報の成果の質問に対する社長の回答です。営業マンに対して、経営ビジョンとして社長の想い・期待を伝え、経営ビジョン実現に向けた第一歩として、日報の役割を明確にして、日報の書式を変更したことを伝えたのです。しかし、結果は、今までどおりの日報の内容でした。

(コンサル)
どのような日報が多いか見せて頂けますか。
(社長)
たとえば、このような内容です。営業マンAさんです。[目的:商品××・○○・※※・**を合計10ケースの販売] [活動:商品説明をして試食をして頂いた] [結果:商談で決まったのは、商品××のみ2ケース決定] [振り返り:得意先の社長が多忙なため、商品説明が十分にできなかった。]
(コンサル)
このような内容に対して、社長はどのような行動をとっていますか。
(社長)
営業部長に対して、日報の趣旨を徹底させ、失敗が成功につながる活動と日報の提出を指示しています。
(コンサル)
ところで、営業部長は、日報を書いていますか。
(社長)
いや、営業部長は、得意先を持っていないので、営業日報を書くように指示はしていません。
(コンサル)
それは、片手落ちではないでしょうか。営業部長も、日々、目的に向かって活動しているではありませんか。まず、営業部長が日報を書けないと、部下に正しく指導することができません。営業部長にも書かせてください。また、今の能力で営業部長が、社長と同じ気持ちで、部下を指導できるでしょうか。
(社長)
将来はともかくとして、今は難しい。
(コンサル)
今は難しい、と分かっていて任せているというのは、おかしいですね。
(社長)
私が前面に出て、徹底させるということですか
(コンサル)
決して、営業部長を無視するのではありません。社長が前面に出る目的を説明して、その上で日報に対して、社長が、どんどん営業マンに対して、質問表を投げかけるのです。たとえば、Aさんの例では、Aさんの意思がまったく伝わってきません。従って、質問では、
  1. 社長が聴いていただける時間はいつなのか
  2. 商品説明は、どの商品までできたのか
  3. 商品説明をして、買っていただけなかった商品は何か。なぜ、買っていただけなかったと思うか
  4. 今回の商談を失敗事例としたときに、次の訪問では、どのような対応をするのか
など意思表示してもらいたいですね。
(社長)
意識改革といいながら、私の対応の甘さが良く分かりました。
(コンサル)
「社長は、営業部長を立てようとされたのだと思います。ただ、今回の日報は、営業マンだけでなく、社長も初めてのことです。だから社長自ら、新しいやり方に挑戦する姿勢が必要なのです。社長が質問することによって、営業マンに対しては、どのような姿勢で得意先に接しなければならないのか、さらに、チャレンジすることが良いことなのだという価値観を教えることにつながります。また、部門長に対しては、何を指導しなければならないかに気づく、機会になるはずです。

このようにして、F社では、社長自らが質問表を営業マンに投げかけるという風土が徐々についてきました。そして、日報の内容も徐々にレベルアップしてきたのです。しかし、チャレンジを成果に結びつけるためには、まだまだ、いろいろな取り組みが必要だったのです。さらなる、F社の挑戦を次回、ご報告します。

F社の事例 その6

チャレンジが成果に結びつかない

営業の現場では、訪問の仕方、商品の提案の仕方、セールストーク、販売促進の提案 等営業マンの工夫する姿、小さな実験にチャレンジする姿が見られるようになってきました。しかし、社長の悩みは、そのような工夫や小さな実験が、本人の単発的な行動に留まっており、全社的な成果に結びついていないことにあったのです。

(コンサル)
"チャレンジが成果に結びついていない"ということですが、営業部門はどのような状況ですか
(社長)
営業マン個々には、新しい営業活動にチャレンジをするようになってきました。その中から、個々には成功事例も報告されるようになってきたのです。しかし、私の目からは、まだまだ小さな実験へのチャレンジが足りません。また、チャレンジしても、ほとんどの場合、やりっぱなしで終わっています。さらに、成功事例の報告があがっても他のメンバーは関心を示さない。このような状態では、チャレンジを成果に結びつけるのは難しいのではないでしょうか。
(コンサル)
おっしゃる通りです。我々も、"チャレンジが成果に結びつく"ように、新しいやり方にチャレンジしなければなりませんね。
ところで、失敗事例は報告されていますか。
(社長)
失敗事例は、皆無に等しいのではないですか。
(コンサル)
なぜ、失敗事例が報告されないのでしょうか。

~社長は、ハッと気づいて~

(社長)
営業マンは、まだ結果だけで評価されると思っている。
(コンサル)
営業ですから、最終的には業績目標の達成が使命だと思います。しかし、社長の目指す営業は、変化するプロセスで勝つ営業ではないですか。従って、チャレンジすること、しかし、チャレンジは成功ばかりではなりませんから、失敗することを認めなければ、チャレンジする風土は生まれてきません。だから、営業マンは、結果を追求されても安全な範囲のチャレンジしかしないのでしょう。
(社長)
しかし、失敗を推奨するわけにいかないからなぁ。
(コンサル)
いえ、失敗を推奨されたら良いでしょう。失敗するだけ、チャレンジする訳ですから。 ただ、推奨されても、営業マンの立場からすると、失敗情報は、やはり出しにくいです。そこで、私のクライアントさんでは、どれだけ失敗をして失敗事例の報告をしたか、失敗の量を表彰しています。また、どれだけ次の改善・革新に結びつく失敗事例を報告したか、失敗の質も表彰しています。このようにして、表彰することでチャレンジする価値観の浸透を図っています。プロセスを評価する場合、表彰制度が良いですね。
(社長)
失敗事例を表彰するとは気がつかなかった。すぐに検討しよう。
(コンサル)
もう一点、成功事例が水平展開されていない事も、チャレンジを成果に結びつける妨げになります。今、営業日報は、ネット上で公開され、営業マンはだれでも見られるようになっていますが、営業日報の情報を集約して、営業マンにフィードバックする仕組はありますか。
(社長)
今は、営業日報の情報を集約して、営業マンにフィードバックする仕組はありません。
(コンサル)
チャレンジを成果に結びつけるためには、情報を集約してフィードバックする仕組が必要です。F社では、私の在職していた洋酒メーカーのように、独立したマーケティング部門を設立することは困難だと思います。そこで、マーティングプロジェクトを立ち上げましょう。
(社長)
どのような仕組になるのですか。
(コンサル)
目的は、
  1. 営業日報の情報から、成功事例・失敗事例を営業マンにフィードバックする、
  2. 営業日報の情報から、商品開発のシーズを見つけることです。
従って、役割は"チャレンジを成果に結びつけるF社成功モデルを構築することです。メンバーは、営業部門、商品開発部門、製造部門 等の組織横断的なメンバーです。
(社長)
プロジェクトリーダーは誰が良いでしょう。
(コンサル)
本来は、プロジェクトメンバーの中から選出したいのですが、現状では、社長が担当するべきでしょう。成功事例・失敗事例を水平展開するためには、一定の強制力も必要です。ただ、プロジェクトの位置付け・役割が浸透した段階では、プロジェクトリーダーをメンバーから選出することが重要です。

このように、F社では、チャレンジする価値観を浸透させる仕組、成功事例・失敗事例を水平展開してチャレンジを成果に結びつけるF社成功モデルを構築する仕組を立ち上げました。現在、F社の「小さな実験が会社を変える"チャレンジを成果に結びつける仕組作り"」挑戦は、まだまだ道半ばですが、着実に新しい成功事例が展開され、新しい成功モデルが構築されています。F社の挑戦の成果については、あらためてご報告させていただきます。

「小さな実験が会社を変える"チャレンジを成果に結びつける仕組作り"」は今回で終わります。次回からは、「人財が商品である」をご報告いたします。