コンサルティング物語

バランス・スコア・カードの導入事例2

EME「コンサルティング物語」は、コンサルティングの現場を物語風にアレンジしたものです。
コンサルタントの役割を身近に感じて頂けるように、EMEの新しいチャレンジです。

 バランス・スコア・カードの導入事例2
〜小企業・零細企業でもバランス・スコア・カードは使える(EMEの事例)〜


その1


コンサルティング物語

バランス・スコア・カード(以下BSC)は、大手企業だけのツールでしょうか。もしかして、社員数が数人の企業では、縁のないツールと思っていませんか。そんなことは、ありません。EMEは、社員数が3名のコンサルタント会社ですが、6年前から、BSCの考え方を導入して、会社を運営しています。BSCの導入に、会社規模は関係ありません。要は、「“会社を変革していきたい”という 意思があるかどうか」が、導入に向けた重要なポイントなのです。


今回のコンサルティング物語では、読者からの声にお応えして、(小企業というより零細企業である)EMEにおけるBSC導入の事例を(苦労話も含めて)お話します。

ここで、少しバランス・スコア・カードのおさらい。  バランス・スコア・カードとは、経営ビジョンを実現するために、財務的な視点に偏ることなく

  • ◎ 顧客の視点
  • ◎ 業務プロセスの視点
  • ◎ 学習と変革の視点
  • ◎ リーダーシップの視点(注1)
  • ◎ 財務の視点

から経営戦略を構築する、さらに、組織全体で取り組む、未来志向の戦略プログラムの考え方です。
詳細は、http://www.emejp.com/support/bsc.html をご参照ください。


(注1)
EMEでは、過去の支援体験、理念共同体である中小企業の特性を考えて、一般的にBSCで検討される4つの視点に加えて、「経営理念・経営ビジョンを実現するために、経営理念・経営ビジョン・経営方針(部門方針)の浸透に向けて、どのような活動をするべきか」を検討する“リーダーシップの視点”を採用しています。


昨年検討した、EMEでのBSC構築の流れを整理すると、次のようになります(EMEが、クライアント企業を支援するときも、基本的に下記の流れになります)。(注2)

  1. 組織プロフィールの検討(EMEを客観的に評価します)
  2. 経営ビジョンの検討(3年後のあるべき姿を検討します)
  3. 3年後のBSCの検討(5つの視点について、戦略目標、重要成功要因、戦略指標を検討します。3年後のBSCでは活動項目は、検討しません)
  4. 3年後の「夢の見える化」(一般的に言われる戦略マップを文章化します)
  5. 1年後のBSCの検討(5つの視点について、戦略目標、重要成功要因、戦略指標、活動項目を検討します)(注3)
  6. 1年後の「夢の見える化」
  7. 目標シートの検討(活動のスケジュール化)
  8. 戦略指標の月次への展開

(注2)
BSCの検討は、基本的に全員参加です(特に、零細企業は理念共同体ですから)

(注3)
EMEは零細企業なので、部門別のBSCはありません。


1〜8まで、項目だけを見ると「我社にそのような時間はない」と言われそうですが、EMEでは、可能な限りスピーディに検討できるように、いろいろな工夫をしています。

  • 例えば、
  • ○ 質問表やポストイットを用意して、お互いに質問に答えながら検討を進めていく。
  • ○ 会議のルールを決める
  • (だれでもが安心して意見が言える「安心の場」を提供するためです)
    • 発言の量を求める(発言の質は問わない)
    • 絶対に、相手の発言の批判をしない
    • 意見と質問しかしない(第三者的、評論家的な発言はしない)
    • 会議の最初と終わりに、キチンと挨拶をする
    • 発言は、社長が最後
  • ○ 時間・納期を守る(レベルを問わない、まず守る)
  • 等々です。

EMEもコンサルタント会社とはいえ、一つの企業です。自社の戦略策定は、決して平坦ではありません。具体的な、検討内容は、次回からお話をします。お楽しみに。



その2

“組織プロフィールの検討(EMEを客観的に評価します)”

コンサルティング物語

BSC策定の第一フェーズは、“組織プロフィールの検討”です。このフェーズでは、EMEを取り巻く環境について、自社(Company)・顧客(Customer)・競合(Competitor)の3つの視点から検討(3C分析)をします。また、それぞれの視点について、過去-現在-将来の時間軸で、検討を深めています。さらに、EMEでは、組織プロフィールを検討するにあたって、EME独自の質問表を準備しており、プロジェクトのメンバーは、質問に対する回答を事前に記述して、検討に臨んでいます(注1)


(注1)
クライアント企業を支援する場合は、プロジェクトのメンバーに対して、質問表に対する答えを、ポストイットに事前に記述してもらい、プロジェクトに参加して頂きます。
今回のコンサルティング物語では、読者からの声にお応えして、(小企業というより零細企業である)EMEにおけるBSC導入の事例を(苦労話も含めて)お話します。

自社の視点の第一のポイントは、自社の過去を振り返ることです。なぜならば、現在の現象(顧客との関係、社員との関係、設備・財務の状態 等)は、過去の活動の結果だからです。成長局面にあるとき、停滞局面にあるとき、どのような活動をしてきたか、客観的に評価することが重要です。この振り返りの中で、経営理念ができた背景や成長局面にある取り組みを再認識するのです。特に、成長局面での活動や雰囲気を、新しい取り組みとして復活させることは、BSC検討時の重要なテーマとなります。とても、重要なことなので、毎年、必ず振り返りを行います。自社の現状を把握することに加えて、もう一つのポイントは、現状のまま推移すると、5年後、10年後、自社のヒト・モノ・カネはどうなるのか、例えば、自分・社員の年齢は、いくつになっているのか、将来の状態をイメージすることです(将来の自分の年齢を考えると、ゾッとしますよ)。


顧客の視点の第一のポイントは、数ある競合他社の中から、「我社がなぜ選ばれているのか」理解することです。理解するときに注意するべきことは、自社が考える「選ばれている理由」ではなく、顧客視点で「顧客が選んでいる理由」を考えることです。EMEでは、(まだまだ不十分ですが)クライアント企業にヒアリングする取り組みを行っています。さらに、この検討を通じて、クライアント企業のタイプ別に、ニーズを再確認しているのです。次に、第二のポイントは、“自社の商品・サービスは何か”を考えることです。言い換えると、“顧客のニーズに適した、商品・サービスを提供しているか”考えることです。昨年度のEMEを振り返ると、商品・サービスの提供が、決して十分ではありませんでした。今期のBSCの策定において、重要な検討ポイントとなります。さらに、第三のポイントは、将来に向けて、“顧客・市場のニーズがどのように変化するか”検討することです。EMEの場合、クライアント企業における“変革の成熟度”(注2)が高まっています。成熟度の高まりに応じて、クライアント企業のニーズの変化が予測されています。また、環境の変化によって、企業経営者の経営コンサルタントに対する要望が、ますます高度化・複雑化すると予測しています。


(注2)
変革の成熟度とは、“経営の変革に向けた組織の取り組みや状態”をいい、経営品質向上プログラムでは、DレベルからAAAレベルまで区分しています(EMEにおいても、経営品質向上プログラムの基準に準拠しています)。


競合の視点の第一のポイントは、競合がどのような企業なのか、正しく認識することです。競合を考える場合、目先の同業者だけを対象とするのではなく、今後出現しそうな新規参入企業や、提供している商品・サービスを脅かすような新技術や新ノウハウも競合と考えるなど、視野の広い考え方が必要です。EMEの場合、ハードメーカーのソリューション部門やASP等のソフトウエアも競合と考えています。次に、第二のポイントは、我社と同様に、競合が「なぜ選ばれているのか」、競合が「どのような顧客ニーズに応えているのか」検討することです。この検討は、推測になることも予想されますが、考え得る事例や状況を収集して、検討することが重要です。その上で、第三のポイントである、「我社の“強み”と“弱み”」について、検討を深める必要があります。“強み”と“弱み”は、相対的なものです。従って、顧客の要望に対して・競合に対して・標準的な企業のレベルに対して 等、基準が大切です。EMEの場合、例えば、認知度を考えると、“中小企業に向けたBSCの導入支援”については、競合と比較して、認知度の高まり“強み”があるものの、“人財マネジメントの導入支援”“企業文化の変革支援”については認知度が低く、“弱み”という位置づけです。


EMEでは、「組織プロフィールの検討(3C分析)」を踏まえて、「SWOT分析」「経営ビジョンの検討」に入ってまいります。この点については、次回お話します。



その3

“経営ビジョンの検討”

コンサルティング物語

SWOT分析(S“強み”W“弱み”O“機会”T“脅威”)は、組織プロフィールの検討の中で、最大のヤマ場です。3C分析を踏まえて、自社を取り巻く経営環境の「機会」と「脅威」を、そして、市場・顧客から選ばれている「強み」と選ばれなくなっている「弱み」を、メンバーがポストイットに記述して抽出します。EMEでは、SWOTの項目について、抽出する量を重要視しています。従って、ポストイットに抽出する枚数は、項目毎に、各自15枚以上という条件を設定します。抽出数が少ないと、各自の意見が類似して、飛躍した発想や潜在的な認識を抽出することができません。

なぜ「15枚なのですか。」という質問を良く受けます。これは、実際にやるとわかるのですが、(1)最初の5枚程度はすぐに書けます(普段から問題意識として持っている項目)。そして、(2)次の5枚も自分の過去の経験・体験を振り返ると書けるようになります(自分の常識の範囲内の項目)。しかし、(3)最後の5枚は、苦しみます。その苦しみの5枚の中に、プロジェクトメンバーの本質的な問題意識、発想を転換した内容があるのです(自分の常識にとらわれない、潜在的な、あるいは飛躍した項目)。

SWOT分析の内容を集約したうえで、縦軸に「強み」と「弱み」、横軸に「機会」と「脅威」を設定すると、

  1. 強みを強化して、機会を獲得する
  2. 強みを強化して、脅威に対応する
  3. 弱みを改善して、機会を獲得する
  4. 弱みを改善して、脅威に対応する

という、4つの変革の方向性が考えられます。一般的には、「(1) 強みを強化して、機会を獲得する」という方向性が、優先的な変革の方向性と考えられています。しかし、資源の限られている中堅中小企業の場合、(1)が優先的な変革の方向性とは限りません。例えば、食品メーカーのA社は、卸売ルートが弱い(弱み)ことを活かして、直接販売ルートを確立しました((3)の方向性)(国レベルでいうと、固定電話のインフラが弱かったことから、携帯電話が猛スピード普及した中国の事例 もあります)。

EMEにおいても、「“EME自体が事業会社である”ことの強みを強化して、市場規模の小さい“中堅中小企業のマネジメント・コンサルティング”市場(脅威と考えられる)において、EMEの存在感を高めること」((2)の方向性)を「基本的な変革の方向性」としています。


そして、EMEでは、この「基本的な変革の方向性」を“見える化”したものが、経営ビジョンと考えます。従って、一般的には、経営ビジョンに「○○を記述しなければならない」という定義はないのですが、EMEでは、3年後の「あるべき姿」として、(1)事業領域、(2)事業ミッション、(3)基本戦略(誰に、何を、どのようにして提供するのか)を明らかにしています。

  1. 事業領域(事業の定義づけ):我々の事業は、本質的に何を提供する事業なのか。どの市場で独自能力を発揮するのか。我社の事業のポジションはどこか。
    • 例:
    • ドリルメーカーは、ドリルを提供しているのではない。提供しているのは、1インチの穴である。1970年代の映画会社の没落は、自らの事業を「映像配給会社」としたことにある、消費者が求めていたのは「娯楽」であった(T.レビット)。
    • 【EMEの場合】
    • 経営品質向上支援業(企業の成熟度向上支援業)
  2. 事業ミッション(事業の使命):我社の果たすべき役割は何か。
    • 例:
    • アサヒビールは、「すべてはお客様の“うまい”のために」
    • 【EMEの場合】
    • ワクワクする組織を創造する。
    • 「すべてはワクワクする組織創りのために」
  3. ターゲット(誰に):ターゲットする顧客は誰か。顧客ニーズは何か。
    • 【EMEの場合】
    • ターゲット=中堅中小企業のトップマネジメント
    • ターゲットニーズ=今のままではいけない、何かを変えなければならない、何をどこから・・・。高い顧客価値を提供しつづける考え方・仕組みを導入したい、支援してほしい・・・。
  4. 商品・サービス(何を):どのような(ターゲット顧客が認める)顧客価値を提供するのか。
    • 【EMEの場合】
    • クライアント企業の成熟度に応じた経営品質向上支援ノウハウ。事業の創造支援・事業の承継支援ノウハウ。
  5. 独自能力(どのようにして):どのような(競合他社と)差別化する仕組み、技術、ノウハウを持つのか。コア・コンピタンスは何か。
    • 【EMEの場合】
    • 企業の自然治癒力を引き出し、革新に向かわせる能力。支援ノウハウ・プロセスを学習により、高度化する仕組み。
    • EMEが「ワクワクする組織」のモデルとなっている。
  6. 3年後のビジネスサイズ:3年後の売上高、利益、従業員数 等を設定します

このようにして、「組織プロフィール」から「経営ビジョン」まで、検討して参りました。この経営ビジョンを実現する「戦略プログラム」が、EMEにおける「バランス・スコア・カード」の位置づけです。

次回は、「バランス・スコア・カード」の基本的な考え方と、EMEにおける「中期バランス・スコア・カード」について、お話します。



その4

“中期バランス・スコア・カードの検討”

コンサルティング物語

経営ビジョンの策定を受けて、中期バランス・スコア・カードの検討に入ります。多くの書籍では、バランス・スコア・カードを策定する前に、各視点の戦略を体系化する「戦略マップの作成」というプロセスを採用しています。確かに、「戦略マップの作成」は、戦略を体系化する有効な手段だと考えます。しかし、EMEでは、あえて「戦略マップを作成」しないで、バランス・スコア・カードの検討に入ります。その理由は、(1)戦略マップを作成すると、戦略マップが前提となって、自由な発想が阻害されるから であり、もう一つの理由は、(2)戦略は、戦略マップに示されているような「原因-結果」の関係や「手段-目的」の関係だけではない(例えば、「システム的な関係」が多く診られます)からです。一方で、(3)経営ビジョンをキチンと合意すれば、「戦略マップを作成」しなくても、視点間のバラツキを最小限で抑えることができるからです(注1)

(注1)
EMEでは、「財務の視点」の検討後に、戦略マップを導入しています。それは、BSCの視点間の整合性を診ることによって、最終的に必要な戦略を付加、無駄と思われる戦略を排除するためです。

  1. 顧客の視点
    顧客の視点の検討ポイントは、(1) 「誰を顧客と考えるか」顧客を決めること、その上で、(2) 顧客とどのような信頼関係を構築するか、そのために、(3) どのような顧客価値(具体的な商品・サービス)の差別化要素を実現するか、にあります。
    また、顧客価値の差別化の視点(個々の顧客ニーズへの対応力、卓越した商品開発力、オペレーション効率の追求力)から、自社の差別化の方向性を検討します。
    • 【EMEの場合】
      ターゲットとする顧客の、個々に異なる顧客ニーズを聴き、「個々の顧客ニーズへの対応力」で差別化を図る方針ですが、永遠に追い求めるテーマです。
  2. 業務プロセスの視点
    業務プロセスの視点の検討ポイントは、(1) どのような商品・サービスの企画・開発プロセスを構築するか、(2) どのような商品・サービスの製造プロセスを構築するか、(3) どのような商品・サービスの提供プロセスを構築するか、について明確にすることにあります。
    中堅中小企業の場合は、上記の3つのプロセスをすべて自社で網羅することは、経営資源の面から、非常に困難です。従って、(4) いかにして外部パートナーとの連携を強化するか、についても検討する必要があります。
    • 【EMEの場合】
      (4) 外部パートナーと連携して、「個々に異なる顧客ニーズ」に対応する、(1) 商品・サービスの企画・開発プロセスを構築することを目指しています。
  3. 学習と変革の視点
    学習と変革の視点の検討ポイントは、(1) いかにして組織の知識・技術を高めていくか、(2) いかにして社員の能力を高めていくか、そして、(3) いかにして社員のモチベーションを高めるか を明確にすることにあります。
    中堅中小企業の場合、社員のモチベーションを高め、人材を人財に育てるプロセスが、大変重要であり、そのポイントは「認める・認められる」環境を創ることにあります。
    • 【EMEの場合】
      商品・サービスを企画・開発するためには、「モチベーションの高い社員の対話による付加価値創造」が欠かせません。EMEにおいては、フラットな関係で自由に発言・行動できる「“安心の場”の創造」「“支援関係”の創造」が重要課題となっています。
  4. リーダーシップの視点
    リーダーシップの視点の検討ポイントは、(1) いかにして経営理念・経営ビジョンを浸透させるか、さらに(2) いかにして戦略プログラムの実行を担保するか、そして、(3) いかにして変革の企業文化を醸成するか を明確にすることにあります。
    中堅中小企業は理念共同体であり、経営理念の浸透⇒行動指針の徹底⇒企業文化の醸成 という流れをキチンと創らなければなりません。模範となるべき経営者の「立ち居振る舞い」が重要な意味を持つのです。
    • 【EMEの場合】
      経営ビジョンは、BSCで見える化を行っています。さらに、「経営理念の浸透⇒行動指針の徹底⇒企業文化の醸成」の流れを創るために、「自分の良さ・相手の良さ」を認めて、お互いに発表する「“ツイてる、ワクワク”キャンペーン」を行うなど、いろいろな仕組みを展開して、ワクワクする企業創りを目指しています。
  5. 財務の視点
    財務の視点の検討ポイントは、(1) どのような財務体質を構築するか、そのために、(2) キャッシュフローをどのようにして向上させるか、(3) 生産性をどのようにして高めるか (4) 投資効率をどのようにして高めるか を明らかにすることにあります。
    1.〜4. までは、先行指標であり、また、実施における投資は、先行投資となります。従って、財務の視点で1.〜4. までの戦略の良さを検証する姿勢が重要です。
    • 【EMEの場合】
      1.〜4.までの戦略の良さを検証するために、(1) 予測貸借対照表、予測損益計算書を作成します。そして、(3) 一人当たりの数値に着目して、一人当たりの生産性の向上を重要課題としています。

このようにして、中期ビジョンから中期のBSCを策定してきました。

EMEでは、次のステップとして、中期のBSCのシナリオを策定します。そして、このシナリオを「夢の見える化」と呼んでいるのです。次回は、「夢の見える化」について お話します。



その5

“夢の「見える化」(夢を実現した状態を文章化します)”

コンサルティング物語

前回、ご報告しましたように、中期のバランス・スコア・カードを検討するにあたっては、「財務の視点」で「顧客の視点・業務プロセスの視点・学習と変革の視点・リーダーシップの視点」の検討内容を、財務的に検証することを行います。

実は、今期、弊社の「中期バランス・スコア・カード」を議論する中で、一つの大きな意識革新がありました。それは、中期の財務の戦略目標を検討している時に、一人の社員から、継続クライアントさんと新規クライアントさんとの比率がどのようになっているだろうか(現状は、継続クライアントさんと新規クライアントさん、そしてスポット受注の比率が、65:25:10 です)、という問題提起があったのです。結論から言うと、(クライアントさんとの平均継続年数が、5.5年という)弊社の強みを活かすためには、当然、継続クライアントさん重視の姿勢を鮮明に打ち出し、継続クライアントさんの比率を高めることが重要です。その結果、継続クライアントさんと新規クライアントさんの比率を70:20 (残 10%は、スポット受注)にすることが、戦略目標となりました。そこで、もう一度、4つの視点において、継続クライアントさんの比率を 70%にするための、戦略目標・重要成功要因を再検討することになったのです。では、継続クライアントさんの比率を 70%にするための重要成功要因は何でしょうか・・・?答えは簡単です。継続クライアントさんの問題意識に対して、謙虚に耳を傾け、問題解決につながる行動・対応をやり続けることです。

今まで、「そこまで焦点を絞って、BSC を創って実行してきただろうか」、自己反省と共に、BSC の視点毎に、“継続クライアント重視”の戦略とするために、新たな戦略目標・重要成功要因、そして、評価指標を抽出したのです(問題定義をしてくれた、弊社の社員に感謝!!一方では、自社の戦略策定では、経営者として、見えていないことが多いことに気づかされます。だれか、弊社のコンサルティングをしていただけませんか・・・(笑))  例えば、【顧客の視点】では、「ターゲットとする顧客の、個々に異なる・・・」という一般論的な表現をやめて、「既存(継続)クライアントさんとの信頼関係をさらに強化することによって、クライアント企業さんの成長とともに、EMEが成長している」という、焦点を絞った対応に変えています。さらに、新規開拓の位置づけも変わりました。今までは、売上向上のための新規開拓でしたが、既存クライアントさんとの関係を強化するという観点から、
「(1) 当面は、新しい様々な企業さんを知ることによって、(商品のバリエーションを高め)既存クライアントさんに対する「サービス力を強化する」、さらに、(2) 中期的には、「既存クライアントさんへの 弊社の対応の良さが浸透して、“新規顧客から弊社へのアプローチ”が、行われる環境を構築する」
ことに決めました。

このようなプロセスを経て、プロジェクトメンバーの中で、中期のBSC の考え方・内容について、合意がなされるのです。そして、次の“夢の「見える化」”ステージに入ります。

“夢の「見える化」”は、中期のBSC が実現できた状態を文章化したものです。中期のBSC が実現できた状態を文章化する訳ですから、プロジェクトメンバーにおいては、実現できた状態をコミットメントすることに繋がるのです。また、弊社では、戦略マップを検討するかわりに、“夢の「見える化」”を検討することで、視点間の関係性を検証しています。

  • “夢の見える化”を作成する時のポイントは、
    1. BSC の内容に忠実であることです。「BSC はBSC、“夢の見える化”は別」ではいけません。
    2. BSC の視点間の関係性に着目することです。例えば、顧客価値と商品・サービスの開発プロセスの関係性、あるいは、業務プロセスと社員の能力の関係 等々
    3. 「実現できた状態を文章化」するわけですから、現在進行形で記述するか、現在完了形で記述することです。例えば、「○○ができている」「○○の評価を頂けるようになった」等の表現を使います。一方、「◇◇ができていたい」「できるだけ◇◇に近づけたい」等の願望やあいまいの言葉や文章は、すぐに×です
  • ここで、いつも感心することは、私が関与させて頂いているクライアント企業さんのプロジェクトメンバーの文章能力の高さです。まさに、「真剣に議論すればするほど、アウトプットは、研ぎ澄まされてシンプルになる」です。
  • 【EMEのサンプル】
  • EMEの3年後は、以下のような「ワクワクする企業」を目指しています。我社が「ワクワクする企業」のショールームとなれるように、一緒に夢を共有しましょう。
  • EMEの3年後は、社員全員が「ワクワクする組織創り」ために、何をすればよいか、「自分の可能性を信じて、自ら考えて、行動する企業」となっています。経営理念が浸透している状態とは、社員の一人一人が、自分のために、仲間のために、そして、クライアント企業さんのために、ワクワクする行動を創造している状態です。
  • ワクワクする行動を創造するためには、自分、仲間、そして、クライアント企業さんの「夢」に対するレベルを知り、レベルにあった行動をしなければなりません。その基準となるのが「成熟度」です。3年後は、社員全員が「成熟度」に対して、正しい理解が進み、相手に応じた、支援メニューを提案することができるようになっています。さらに、組織全体がワクワクするためには、全体最適でなければなりません。3年後は、「安心の場」における「支援的な活動(相手のために、自分の行動を修正する活動)」によって、全体最適に基づく、新しい付加価値を創造できるようになっており、その成果は、書籍や論文で世間に発表されています。
  • - 以下略 -

弊社では、“夢の「見える化」”を創って、中期的な会社のベクトルを併せています。

次のステップは、次年度のBSC の検討に入ります。次年度のBSC の戦略目標・重要成功要因・評価指標の考え方は、中期のBSC と同じです。従って、次回は、次年度のBSC の活動項目の策定を中心にご報告します。



その6

コンサルティング物語

中期のBSCを構築、中期の“夢の「見える化」”を作成して、いよいよ次年度のBSC の策定にはいります。今回の報告では、(視点毎における“戦略目標” “重要成功要因” “評価指標”の検討は、前々回の報告と重複しますので)“活動項目”の検討について、ご報告します。

“活動項目”は、スケジュールと担当責任者が明確でなければ、実行されません。従って、“活動項目” の検討とは、活動項目を抽出するだけでなく、スケジュール化、担当責任者の明確化を意味します(注1)

(注1)
「スケジュール化は、担当責任者に任せればよいではないか」という意見もあります。確かに、一理あります。しかし、我々は、プロジェクト全体でのスケジュール化にこだわっています。その理由は、(1)経営ビジョンを実現するために、“だれが、いつ、どのような活動をするのか”について、プロジェクトメンバー全員が合意すること (2)プロジェクトメンバーが合意をすることによって、担当責任者の実行力を担保すること (3)(特に、小企業・零細企業では)活動項目を実行するためには、他部門のことであってもお互いに支援し合うこと を重要だと考えているからです。

“戦略目標”“重要成功要因”“評価指標”を実現する活動項目の抽出は、ポストイットと模造紙(もしくは白板)を活用します(注2)。まず、模造紙の縦軸にBSC の視点と活動項目が書けるようにします。一方、横軸には、月次のカレンダーをいれます。(模造紙の場合、BSC の視点毎に1枚準備することをお薦めします)

(注2)
自由にたくさん記述できる模造紙がお薦めです。

次に、BSC の視点毎に、プロジェクトのメンバーが、必要だと考える活動項目を、太いマジックでドンドン記述します。そして、記述したものを、模造紙の活動月・実施月に貼りつけていきます。貼ってはがせるポストイットですから、まずは、仮説的に活動月・実施月に貼り付ければよいのです。ここで注意するべきは、年間で複数回実施する活動(例えば、EMEの場合、“主催セミナーの実施”)も、実施する月毎に複数毎のポストイットを貼り付けることです。また、この段階では、だれが(あるいはどの部門が)担当責任者になるかは、議論しないことが重要です。くれぐれも、新しい活動を提案した人に、(声の大きい人から「そしたら、君がやって」と言われて)お鉢が回ってくるようなことがないように、そのような慣習は、排除しなければなりません。

ポストイットを貼り終われば、BSC の視点毎に活動項目を見渡します。検討するポイントは、『(1)物理的に不可能な活動項目の数が抽出されていないだろうか (2)特定の月に活動が集中していないだろうか』です。(1)の場合、活動項目に優先順位を付けて、優先度の低い活動項目をはずします(ただし、破棄するのではありません。選択した活動項目が成果に結びつかない場合、すぐに対応できるように、予備の活動項目として保管しておきます)。(2)の場合、ポストイットが威力を発揮します。活動月・実施月を変更するのです。

さらに、活動項目を実施するために、準備しなければならない活動(例えば、主催セミナーを実施する前に、“年間セミナーテーマを決める”など) を細いマジックで、ポストイットに記述して、活動項目の前に貼ります。この検討が非常に重要です。私の支援経験の中でも、準備活動を明確にしていないために、日常の活動が優先されて、活動項目が実施できなかった、実施しても中途半端な活動で終わった、このような事例は挙げればキリがありません。

そして、最後に、担当責任者を決めます。担当責任者の決定は、活動項目を実施するという観点から、フェアであることが重要です。「君が言い出したから」という理由だけで決まるのはナンセンスです(でも、現実的には、このような文化を持っている会社は、非常に多いですね。ひょっとすると、読者の皆さんの会社でも・・・)

このようにして、次年度のBSC について、“戦略目標” “重要成功要因” “評価指標” “活動項目”を決めていきます。そして、次年度のBSC の仕上げは、あるいは予測損益計算書・予測貸借対照表そして予測キャッシュフロー計算書を使って、BSC の有効性、財務リスクを明確にします(注4)。そして、次年度のBSC 策定の総仕上げとして、次年度の“夢の「見える化」”を創ります。

(注4)
戦略マップについて 第4回目にご報告しましたように、EMEの場合、戦略マップの活用は、導入2年目から、必要に応じて「BSC の視点間の整合性を診る」検証ツールとして使います(初年度は、戦略マップをほとんど使いません)。戦略マップに変えて、文章によって将来をイメージ化する“夢の「見える化」”を重視しています。


いよいよ、BSC プロジェクトによる、BSC の策定活動が終盤を迎えました。次回は、「バランス・スコア・カードの導入事例2」の最終回です。夢を実現するために、BSC をいかに浸透させて、日常的に管理していくか、BSC のマネジメント体制について、“変革する意識”と“変革する仕組み”の両面から、ご報告します。


その7

コンサルティング物語

いよいよ「バランス・スコア・カードの導入事例2」の最終回です。夢を実現するために、BSC をいかに浸透させて、進捗状況を管理していくか、BSC のマネジメントについて、ご報告します。

BSC を導入した弊社のクライアント企業では、異口同音に「BSC という仕組みを導入しても、変革は遅々として進まない。変革を“良し”とする企業文化を醸成しなければ、社員の“やらされ感”は、払拭できない。」と言います。  私も、クライアント企業の声に賛同するとともに、この声がBSC の本質を突いていると考えるのです。つまり、BSC の本質は、企業文化を変革することなのです。従って、BSC のマネジメントとは、「“スコア(数値目標)”をマネジメントすること」と「“企業文化の変革”をマネジメントすること」なのです。

私の経験からのお話で恐縮ですが、多くのBSC 導入企業で、「“スコア(数値目標)”をマネジメントすること」については、マネジメント体制を整え、毎月・あるいは四半期毎に進捗度を評価しています。一方、BSC の導入企業で、成果に結びついていない企業の多くは、「“スコア(数値目標)”をマネジメントすること」に留まっており、「“企業文化の変革”をマネジメントすること」ができていない、あるいは担当部門に任せてしまっているのです。

“企業文化”とは、企業が共通で持つ価値観や考え方に基づいて、社員が判断して行動する行動様式の集合体です。例えば、毎回、約束の時間に会議の始まらない会社があります、一方では、会議の開始時間の5分前には、全員が集合している会社があります。前者の会社には、“目先の仕事が大事だから、会議に少々遅れても大丈夫”という価値観があり、後者の会社には、“会議は重要であり、時間に遅れると出席者全員に迷惑をかけるから、時間前に集合することが当たり前”という価値観があって、その価値観の違いが、会議のスタート時間に集まらない・集まるといった行動となって現れるのです。従って、「“企業文化の変革”をマネジメントする」とは、本質的には、価値観をマネジメントすることですが、現実的には、行動をマネジメントすることになります。言い換えると、成果に結びつかない企業の多くは、活動項目をマネジメントできていない、あるいは担当部門に任せてしまっているのです。

一方で、BSC は、経営ビジョンを達成するために、新しい取り組みへのチャレンジを求めています。言い換えると、活動項目も経営ビジョン達成に向けた仮説なのです。従って、活動項目を実施することは、仮説を検証することであり、成果に結びつかない活動項目については、修正・中止をして、新しい活動項目を組み立てなければなりません。

整理すると、「“企業文化の変革”をマネジメントする」とは、(1) 計画された活動をキチンとやりきる(仮説としての活動項目を検証する:狭義のPDCA)、(2) 活動が成果に結びつかないと判断される場合(仮説が検証されなかった場合)は、新たな活動項目を設定して実行する(広義のPDCA)を行うことです。

EMEにおいても、BSC のマネジメントでは、活動項目の進捗状況を重視しています。そして、成果に結びつかないと認識したら、年初の活動項目に捕らわれることなく、新たな活動項目に変更していきます。中小企業の特質は、変化への対応力であり、重要なことは、数値目標を実現することなのです(皆さんの会社では如何でしょうか。年初に決めた活動項目を実行することが目的化されて、フレキシブルな対応がサビついていないでしょうか)。

さらに、弊社のクライアント企業では、2ヶ月に1回あるいは、四半期に1回、新しいことに挑戦したこと、変革したことに対して、大自慢大会を行い、表彰を行っています。変革する行動を認める(企業文化を変革する)取り組みです。このように、企業文化の変革は、新しい行動を評価することですから、表彰制度のとの組み合わせが効果的です。


最後に、BSC の導入において、理会して頂きたいこととして、価値観リスクと財務リスクがあります。

価値観リスクとは、BSC を導入することによって、「今までの価値観」と「変革の価値観」とが衝突するリスクです。例えば、今まで、トップの指示命令を愚直に守ってきた価値観と自ら考える(挑戦する)ことを大切にする価値観の衝突です。弊社のクライアント企業の例でも、性急にBSC を導入したために、技術を持った職人型の社員が、退職したために、技術の伝承ができなくなり、経営的な危機に陥ったことがありました。その会社の場合は、優秀な経営者の対応で、最悪の事態を脱して、成長局面に入ることができましたが、価値観リスクを受けたときは、言葉ではあらわせない状況でした。社員とのコミュニケーションの重要性を痛感した事例でした。

財務リスクとは、BSC の導入当初は、プロセスの革新や人財の育成コストが先行投資として掛かることから、財務的なシミュレーションを行い、キャッシュフローをキチンと管理しておかなければ、資金繰りから経営的な危機に陥ることです。経営ビジョンを実現するために、顧客の視点・業務プロセスの視点・学習と変革の視点で策定した戦略目標が、財務の視点では過大投資となることが判明した事例は、数多く経験しています。


上記のようなリスクがあるものの、BSC は経営戦略上、大変有効な考え方であり、ツールです。ただ、EMEでは、今までの経験から、「BSC は、もっともっと日本的であり、中堅中小零細企業が活用できる考え方・ツールでなければならない」と考えています。今回のコンサルティング物語でも、EMEの事例を交えながら、テキストにはない、EMEのBSC に対する考え方( EME流BSC )をご報告させていただきました。日本的なBSC を追求するために、EMEとして、様々なチャレンジを続けて参ります。

お読み頂いた皆様からのご感想・ご意見をお待ちしています。

BSC 導入事例3では、さらに進化したBSC の導入事例をご報告したいと考えています。

次回からは、「新しい経営理念を浸透させる 〜企業文化の再構築〜」をご報告いたします。


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