コンサルティング物語

経営ビジョンをつくる

EME「コンサルティング物語」は、コンサルティングの現場を物語風にアレンジしたものです。
コンサルタントの役割を身近に感じて頂けるように、EMEの新しいチャレンジです。

 経営ビジョンをつくる −経営ビジョンの策定を通じて幹部社員を育成する−


その1

〜 経営ビジョンプロジェクトの立ち上げ 〜

コンサルティング物語

F社は、創業25年の食品メーカーです。G社長は、大手食品メーカーL社のトップセールスマンでした。しかし、大企業にいると、自分が本当に販売したい商品(地域に隠れているすぐれた食材)を売ることができない、それならば、自分が優れた食材を発掘あるいは開発して、販売する会社をつくろうと、G氏が40歳で脱サラしてつくった会社です。H専務は、L社時代の部下であり、G氏を慕ってついてきた営業マン、I常務も部署は違うもののG社長に魅力を感じ、設立後、L社から転職してきた人材です。
G社長は、F社を設立早々、苦難に遭遇します。設立間もない企業に対して、商品を卸してくれるメーカーもなく、また、取引先もL社との関係を意識して、あらたな取引に応じてくれませんでした。そこで、営業をH氏に任せ、自分は仕入先開発、商品開発に没頭しました。このようなG社長の奮闘により、ユニークな商品の開発がすすみ、また、バブルの追い風もあって、業績を伸ばすことに成功したのです。また、製造担当のJ部長は、安定した商品を供給するために、F社がM&Aをおこなった企業の工場長でした。
このような苦難と成長の歴史の中で、G社長とH専務・I常務との間で、経営に対する認識ギャップが広がっていきました。いつの間にかG社長への依存体質ができあがっていったのです。

経営幹部の育成に危機感を持ったG社長は、EMEのセミナーに参加され、その後、弊社に相談にこられたのです。

【F社】地方の中核都市にある食品メーカー
 年商:約10億円
 従業員数:30名(パートを含む)
 G社長
 H専務(営業担当)
 I常務(経理・財務担当)
 J部長(製造担当)
 K部長(商品企画・マーケティング担当/長男)


G社長: 社は、創業25年の食品メーカーです。我が社の最大の課題は、経営幹部の人材が育っていないことです。専務にしても、常務にしても、真面目に仕事をするのですが、自分で意思決定ができない。いつでも、私に相談にきます。私には、38歳の息子がおり、商品企画・マーケティング担当の部長をしていますが、これもパッとしません。
コンサル: 今まで、苦労を乗り越えてこられた社長からすると、誰もが、パッとしていないように見えるのではないですか。
G社長:私のような平凡な人間がここまでやってこられたわけですから、私より10歳も若い専務や常務は、もっと活躍できるはずです。私の息子も、海外への留学経験もあるわけですから、私より広い視野で経営がみえるのではないでしょうか。
コンサル: それで、どのようにしたいとお考えですか。
G社長: 先日のセミナーで、先生は、経営幹部育成の一つの方法として、経営革新プロジェクトのお話をされました。そこで、私は、ピンときたのです、経営幹部を経営ビジョンづくりに参画させて、経営ビジョンをつくるなかで、経営幹部を教育していくべきだと。ただ、今までは、私が一人で経営ビジョンを我流でつくってきましたし、経営幹部も私の前では、多くを話しません。そこで、先生に、経営ビジョンづくりを通じて、経営幹部の教育をお願いしたいのです。
コンサル: それは、大変光栄なお話です。ただ、お引き受けする前に、社長が考えている経営幹部社員に対する認識や能力課題を教えてもらえませんか。
G社長: 総じて、自分に任されている(と思っている)業務に対しては、高い能力を発揮していると思います。しかし、経営幹部として捉えたときに、会社の将来を考えるとか、部門の利益より全体の利益を考える思考が弱い。今とこの場所にしか、問題意識はないのです。
コンサル: 息子さんの認識はどうですか。
G社長: 息子にも、自分が引き継ぐという迫力がない。もっと、私の仕事を取りにきてほしい。私だけでなく、他の幹部もそれを望んでいます。
コンサル: でも、息子さんは気づかない。
G社長: 相手の気持ちを理解しなければ、良い社長になれません。
コンサル: もう一つ、教えてください。今まで、社長一人で経営ビジョンをつくってこられた、とおっしゃいましたが、なぜ、社長一人で経営ビジョンをつくってこられたのですか。幹部の方々に、ご相談はされなかったのですか。
G社長: 何度か、「将来のことについて、話し合おう」とか、「このような将来像について、どう思うか」という投げかけをしたのですが、彼らの答えは、「将来のことは、社長がお考えください。私たちは、今の儲けを考えますから」といって、乗ってきませんでした。だから、私一人でつくるようになったのです。
コンサル: わかりました。それでは、経営ビジョンプロジェクトを支援するにあたって、2つお願いがあります。一つ目は、経営幹部の教育、言い換えると意識改革が目的ですから、今回のプロジェクトにおいて、社長はオブザーバーとして参加してください。経営幹部の発言をじっくり聞いて欲しいのです。そして、メンバーの議論が、本当に行き詰ったり、社長の考えと大きくブレが生じたりしたときに、考えるヒントや方向性を提供してほしいのです。二つ目は、経営幹部の方々が話し合いながら、手順を踏んで、経営ビジョンを構築していきますので、社長一人でつくるよりも、時間がかかるということです。
G社長: 発言を控えて、腰を据えて 取り組め ということですか。
コンサル: そのとおりです。

こうして、F社における経営ビジョン策定プロジェクトがスタートしました。第一回目までの宿題として、各人がF社の概要(F社の歴史・業績、市場・顧客、競合他社、F社が選ばれている理由 等)を整理してもらいます。G社長は、多少、自分の問題にも気づいているのかな と思ったのですか、現実は、そう甘くはありませんでした。

* *



コンサルティング物語

その2

〜 我が社が選ばれている理由とその背景を整理する 〜

今日は、経営ビジョンプロジェクトの初日です。プロジェクトメンバーは、営業担当のH専務、経理・財務担当のI常務、工場長のJ部長、商品開発・マーケティング担当のK部長(息子)です。参加者には、「あらたな負担が増えるプロジェクトが始まった」と言いたそうな雰囲気が漂っていました。


G社長: 近年、市場の環境は、ますます厳しくなっている。しかも、この傾向は、今後も続くと思われる。我々のような小さな企業が生き残っていくためには、社員一人ひとりが、経営者感覚を持って、主体的に動くことが重要だと思う。特に、ここに集まってもらった経営幹部が、経営者感覚を持たなければ、社員は、決してついてこない。そこで、毎年、私が経営ビジョンを作成していたが、今年は、コンサルタントの先生の指導を仰ぎながら、このプロジェクトで主体的に経営ビジョンを作成してもらいたい。さっそく、コンサルタントの先生を紹介しよう。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: では、さっそくプロジェクトをスタートさせましょう。検討を進める前に、効率よく対話が進むように、3つの役割を決めましょう。
  リーダー:このプロジェクトの推進者であり、対話のまとめ役です(K部長)。
    最初は、私が対話を推進しますが、徐々にリーダーの方に役割を
    引き継いでいただきます。
  書記:会議の内容を記録していただきます。決定事項が不明確な時、
    決定事項の確認等もおこなってください(I常務)。
  タイムキーパー:会議の時間を有効に使うように、
    会議の時間をコント ロールしてください(H専務)。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル:皆さんの事前準備のシートのできぐあいはいかがでしょうか。
H専務: 会社の歴史は、知っている範囲で記述しました、また、顧客のことはわかる範囲で記述しましたが、そのほかの項目は、よくわかりません。
J部長: 私は、工場の出来高はわかりますが、会社の歴史や営業面はわかりません。
コンサル: ほかの皆さんも同じような完成度でしょうか(全員頷く)。
G社長: ちょっと待ってください。これでは、だれも真面目に宿題をしてきていないということじゃないですか。
コンサル: 社長、大丈夫です。皆さん、白紙ではありませんので。初めて問われる内容が多いと思いますので、なかなか難しかったでしょうね。それぞれの方の専門分野の記述をたたき台にして、議論を進めましょう。また、先ほど、お話を伺うと、社長はほぼ埋められているようですので、今日は、社長のシートとの比較を交えながら、内容の検討をすすめてまいりましょう。
コンサル: では、会社の歴史の話は、H専務から発表をお願いします。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: ありがとうございます。H専務の発表に対して、皆さんから付け足すことはないですか。I常務は、創業後、何年目に入社されましたか。
I常務: 創業から、3年目だったと思います。
コンサル: K部長。創業は、K部長が何歳の時でした。
K部長: 高校受験の頃だったと思います。ですから、14歳か15歳の時でした。
H専務: そうそう、俺がよく勉強を教えてやったよ。
K部長: そんな記憶は全くございません(笑)。
I常務: チョット待ってよ。このような会話は議事録に書けません(笑)。
   ※ちょっと、雰囲気がほぐれてきたようです。
コンサル: 皆さんの入社も成長の重要な要素ですから、経営幹部の皆さんの入社年も、必ずシートに入れてください。さらに、主要な得意先と取引を始めた年、主力商品を発売した時もシートに入れていきましょう。
 
 ― 中略 ―
 
H専務: G社長。栄枯盛衰、25年の間に、いろいろありましたねぇ。
G社長: いやぁ、ここまで来ることができたのも、ここにいるみんなのおかげだよ。感謝している。
コンサル: では、F社がここまで来るにあたって、大切にしてきた考え方や行動は、どのようなものだったのでしょうか。
H専務: それは、玄関に掲げている「日々、前進」でしょう。社長の商品開発力によって、我々の企業は成り立っています。
コンサル: それでは、「日々、前進」は、社長だけの言葉なのでしょうか。社長以外の皆さんの「日々、前進」は何だったのでしょうか。
J部長: 社長の商品開発力はずば抜けているが、それも、商品を生産する工場があってこそ具現化する。従って、「日々、前進」は、社長だけのものではない。
K部長: 社長の商品開発力は、確かにすばらしい。しかし、最近は、商品開発部が企画設計した商品も具体化している。やっと、商品開発部も商品開発からマーケティングまで、売り切る体制ができてきた。これも、「日々、前進」ではないか。
H専務: 営業も、日々、新規開拓に取り組んでいる。また、新しい商品については、愚直なまでの販売努力をおこなっている。これも「日々、前進」ではないか。
G社長: 部門ごとに、自分たちの役割に基づいて、必死の努力をおこなっていることは認める。しかし、会社全体として、社員が一枚岩となって、「日々、前進」しているとは言いがたい。今回のプロジェクトを通じて、社員と共有できる経営ビジョンを作り、全社一丸となって「日々、前進」する体制を構築したいのだ。
コンサル: それでは、社員と共有できる経営ビジョンを作り上げるために、まず、我が社の強みに着目していきましょう。
コンサル: 少し、頭の体操です。目の前に、2件の焼き鳥屋があります、皆さんは、どちらの店にも、一度入ったことがあります。今日、飲みに行くとしたら、どのような店の方に入りますか。皆さんの意見を教えてください。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: いろいろな意見がでましたね。では、もうひとつ質問です。2件の焼き鳥屋を「桜屋」と「柳屋」としましょう。「桜屋」に入るか、「柳屋」に入るか、決めているのはだれですか。
H専務: お客です。
コンサル: さすが、営業担当の専務ですね。お客様が、皆さんが意見をいったような、さまざまな理由で、お店を選んでいるのです。お客様が、その店を選ぶ理由を「顧客価値」といいます。では、専務に質問です。お客様が、我が社を選ぶ理由、つまり、我が社の顧客価値は何だと思いますか。我々からの目線でいうと、我が社が選ばれている理由です。
H専務: 宿題のシートにも、その質問があったが、そんなこと考えたこともない。
コンサル: では、少し時間を差し上げますので、各自で考えてみてください。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: いろいろな意見がでましたが、選ばれている理由として、重要なものは、「ユニークな商品を取り扱っている」「小ロットに対応してくれる」「営業マンが親身になって対応してくれる」 「経営者が信頼できる」ですね。
コンサル: では、次の質問です。我が社では、なぜ「ユニークな商品を取り扱う」ことができているのでしょうか。顧客の視点、仕事の流れ(業務プロセス)の視点、組織と人の視点、リーダーシップ(理念・ビジョンの浸透)の視点、財務の視点から考えてみましょう。先ほどの焼き鳥屋さんの例でお話しします。例えば、「味が良い」で選ばれているお店の場合、「味が良い」と評価されている背景に、@仕事の流れ(業務プロセス)として、“特別な仕入れルートを持っている”あるいは“特別な厨房のレイアウト・設備がある”、A組織と人の視点として、“腕の良い料理長がいる”・・・(中略)。このように整理するのです。
J部長: このような難しい質問は、私には無理だ。社長・専務・常務で考えてほしい。
コンサル: J部長。この問いかけの答えは、皆さんの日常の仕事の中に隠されているのです。だから、皆さんの知恵や経験が必要なのです。もう一度、一緒に、我が社では、なぜ「ユニークな商品を取り扱う」ことができているか、整理してみましょう。
 
 ― 中略 ―
 

このようにして、F社に経営ビジョンプロジェクトがスタートしました。選ばれている理由の背景については、結局、「ユニークな商品を取り扱っている という評価の背景を整理して、その他の「小ロットに対応してくれる」「営業マンが親身になって対応してくれる」「経営者が信頼できる」という評価の背景については、宿題となりました。次回は、我が社が選ばれている背景を強みとして整理していきます。

* *

コンサルティング物語

その3

〜 強み・弱み、機会(追い風)・脅威(向かい風)を整理する 〜

プロジェクト2回目。宿題は、「我が社が選ばれている理由とその背景の検討」でした。プロジェクトメンバーの宿題の完成度は、どうだったのでしょうか。


コンサル: 「我が社が選ばれている理由とその背景」のシートに、どれだけ記入できているでしょうか。
H専務: 顧客の視点という項目は、少し書けたが、他の項目は難しい。まして、社長への信頼の背景については、なかなか書けません。
I常務・K部長:一応、書きましたが、正しいかどうか、よくわかりません。
J部長: やっぱり、よくわかりません。中途で入社したからでしょうか。
G社長: 全然、書けていないではないか。忙しいのはわかるが、もっと、真剣に取り組んでもらわないと困る。
コンサル: 社長、大丈夫です。少しでも、書く努力をしていると、必ず書けるようになります。0と1とのギャップは、1と100のギャップより大きいのです。
G社長: そうでしょうか。先生は、少し甘いのではないですか。もっと、尻を叩いてもらわないと・・・
コンサル: 社長は、幹部の方々を信頼していないのですか。もう一度、研修前の約束を思い出してください。
G社長: ・・・
コンサル: 書くのが難しいのは当たり前です。自分で、自分のクセは気づかないでしょう。企業も同じで、社内にいると会社の良さは、なかなか気づかないのです。でも、会社の良さを客観的に気づこうとする姿勢が大事なのです。では、皆が書きにくいといっていた、「経営者が信頼できる」の背景から検討してみましょう。社長の良さを丸裸にするのです。(力のない笑い)
コンサル: まず、顧客の視点から検討しましょう。社長は、市場・顧客にどのような姿勢や行動で接していますか。特に、商品を開発するために、市場・顧客の要望や期待をどのように聴いていますか。また、発売した商品の評価をどのように把握されていますか。
H専務: 社長は、営業マンの日報を、必ず目を通しています。そして、気になる日報の記述に対しては、必ず営業マンを呼んで、内容の確認をしています。時には、営業マンと一緒に、バイヤーのもとや店頭に出られます。
K部長: 社長は、我が社の商品だけでなく、関連する商品の動向にも敏感です。それと、業界内の経営者との会合より、業界外の経営者との会合によく出席されます。
G社長: どのような会合に出席しているか、気づいていたのか。では、どうして、業界外の経営者との会合に出るのか、わかるか。
K部長: ・・・
G社長: 業界内の会合に出ていると、どうしても、業界内の発想しかできなくなる。H専務にも、K部長にも、我が社の商品だけでなく、他の業界や他社の商品の動向にも関心を持ってもらいたいのだ。私は、業界にとらわれない発想で、商品を開発してきたつもりだ。H専務にも、K部長にも、他の業界や他社の商品の動向にも関心を持って行動してもらいたい。そして、新商品を開発した背景をもっと理解してもらいたい。そうしたら、もっと、販売することが楽しくなるはずだ。
コンサル: なるほど、市場の情報の背景があるから、社長が開発する商品に対する信頼感が高いのですね。今の検討内容を「経営者が信頼できる」の背景に記述しましょう。では、次に、業務プロセスの視点を検討しましょう。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: 「経営者が信頼できる」の背景の最後の視点として、リーダーシップ(理念・ビジョンの浸透)の視点を検討しましょう。言い換えると、「経営者のこだわり」の視点です。社長は、どのようなことにこだわっているから、信頼されているのでしょうか。
J部長: 社長は、「ユニーク」という言葉にこだわっていると思います。
コンサル: 具体的には、どういうことですか。
J部長: F社にお世話になる前の会社では、コストダウンが至上命題でした。新しい商品を創るというよりも、競合他社の商品の真似をして、安く作ることだけを考えていました。F社の場合、作り方に対する、社長の細かい指示への対応力が求められます。(笑) 我々は、社長が「なぜ、そのような指示をするのか」、よくわかりませんでしたが、今回の議論を聴きながら、“市場にない「ユニーク」な製品を創りたい”のだなぁ ということがわかりました。
G社長: おいおい、前回もユニークな商品づくりについて、議論をしたではないか。それでも、指示の理由もわからず、モノづくりをしていたのか。
J部長: 腑に落ちていませんでした。
H専務: 社長は、市場や顧客の要望・期待を引き出し、それを商品として、実現しています。顧客からすると、自分たちの要望したものが商品になるのですから、親身になって売って頂けるのだと思います。
コンサル: 具体的な事例はありませんか。
H専務: 先日も、お客様のところへ行って、「○○という商品を創りたいと思っているけれども、(お客様の)社長は、○○というような商品、売れると思いますか」と聴くのです。また、(お客様の)社長が「ちょっと、難しいのではないか」というと、「どこを直したら売れると思いますか」・・・ こう言って、お客様を商品開発にどんどん引きずり込む感じです。
コンサル: お客様と一緒になって、商品開発しているのでしょうね。H専務は、このやりとりが信頼につながっている と言うのですね。社長のお考えは、いかがですか。
G社長: 私も、H専務が言う、お客様とのやり取りについては、初めて気が付いた。確かに、お客様と一緒に商品開発をしたいという気持ちは強い。“日々、前進”といっても、我が社だけの考えで前進していたのでは、唯我独尊になる。それは、やってはいけない。
K部長: やっぱり、社長の前向きな姿勢が、信頼につながっているのではないでしょうか。
I常務: 私も、K部長の意見に賛成です。“日々、前進”を率先して実践しているのが社長です。
G社長: ・・・ (だったら、幹部も率先して実践しろよ と言いたそうでした)
コンサル: では、次の選ばれている理由「小ロットに対応してくれる」に議論をうつしましょう。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: 「選ばれている理由とその背景」を議論してきました。これから、我が社の“強み・弱み、機会(追い風)・脅威(向かい風)”を整理します。今まで議論してきた「選ばれている理由とその背景」は、すべて、“我が社の強み”です。一方、この要素だけは、“我が社の弱みあるいは改善するべき項目”を抽出しましょう。
 
 ― 中略 ―
 

このようにして、F社の“強み”と“弱み”を整理していきました。プロジェクトメンバーは、少しずつ自己開示をおこなうようになり、議論も活発化してきました。また、F社の“強み”を認識したことにより、社長のプレッシャーからも自信を取り戻したようです。プロジェクトメンバーが前向きに取り組みはじめたことにより、宿題となった“機会(追い風)・脅威(向かい風)”に対しても、真摯に取り組むと期待しています。さらに、“強み・弱み、機会(追い風)・脅威(向かい風)”を踏まえた、経営ビジョン創りについても、基本的な考え方を説明して、次回までの宿題としています。

プロジェクト終了後、G社長とコンサルタントは、次のようなやり取りをしました。

G社長: 今日は、先生に対して、“甘い”と失礼な発言をしました。今日の議論を聴いていて、彼らが、私が思っている以上に、いろいろと考えていることを知りました。しかし、もう一歩、深いところまでは理解していないようです。先生の言いたかったことは、私がやってきたことの意味を“彼らに気付かせることだった”のですね。
コンサル: それだけではありません。G社長にも、彼らを認めてやってほしいのです。彼らは、G社長をキチンと認めています。今度は、G社長が、彼らを認めて育成していく番です。。

G社長は、コンサルタントの言葉を、どこまで理解したでしょうか。

* *

コンサルティング物語

その4

〜経営ビジョンを絵で描く〜

今回は、F社の経営ビジョンを整理します。その前に、将来に向けて、ビジネスの“機会(追い風)・脅威(向かい風)”を整理するのですが、“機会(追い風)・脅威(向かい風)”の宿題、真摯に取り組んできたのでしょうか。


K部長: H専務から、「“機会(追い風)・脅威(向かい風)”について、ひとりで考えていると言葉がでてこない。少しずつでもみんなの意見を持ち寄って、幹部で話し合ったらどうか」という意見をもらい、少し、みんなで話し合いました。
 
  ☆どうも、H専務がK部長の育成のために、背中を押したようです。
 
コンサル: K部長、ありがとうございます。事前に話し合ってこられたのは、すばらしい取り組みですね。その結果、どうなりましたか?
K部長:“機会(追い風)”については、「食のグローバル化・多様化」「本物志向」「販売ルートの多様化」「SNSの進化」があがってきました。“脅威(向かい風)”については、「所得の減少」「デフレ化傾向」「少子高齢化」「仕入先の高齢化・減少」があがりました。また、「安全・安心への関心の高まり」については、“機会(追い風)”にも “脅威(向かい風)”にも、なると思います。ただ、経営ビジョンについては、まとまりませんでした。今度のプロジェクトで、整理をしていこうということになりました。
コンサル: K部長、ありがとうございます。もう少し、このような言葉がでてきた背景や話し合った内容についても、報告願えませんか。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: なるほど。みなさんの話し合いの内容を整理すると、「本物志向」や「安全・安心への関心の高まり」から、消費者が納得できる商品を開発していけば、また、販売方法を誤らなければ、まだまだビジネスチャンスがありそうですね。ただ、一方では、「仕入先の高齢化・減少」が進んでいる中で、消費者が納得できる商品を開発していくためには、仕入先を開拓・指導・支援していくことに加えて、仕入先間の連携も欠かせない という課題も浮き彫りになったようです。
コンサル: 今まで、検討してきた、我が社の“強み・弱み”、ビジネスの“機会(追い風)・脅威(向かい風)”を踏まえて、我が社の“経営ビジョン”について、検討を深めていきましょう。
コンサル: まずは、“変革の方向性”です。“変革の方向性”は、今後、どのような理由で、顧客から選ばれ続けたいか、言い換えると、どのような顧客価値を提供する会社になるのか を検討することです。H専務、議論の口火を切る言葉をお願いします。
H専務: 口火といわれましても・・・。やはり、私は、F社にしかない“ユニークな商品”を販売し続けたいですね。
コンサル: では、H専務に伺いたいのですが、F社でいう“ユニークな商品”とは、どのような商品なのでしょうか。
H専務: ・・・
コンサル: J部長はいかがでしょう。
J部長: ・・・
コンサル: もうひとつ、意地悪な質問ですが、“ユニークな商品”と“変な商品”とは、どこが違うのでしょうか。
K部長: “ユニークな商品”とは、お客様に感動を与える商品だと思います。一方、“変な商品”は、お客様に感動を与えない、むしろ、不快感を与える商品だと思います。
コンサル: K部長、エンジンがかかってきましたね。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: みなさんの意見を整理すると、我が社の“変革の方向性〜どのような価値提供の会社になるか〜”は、「おいしさの感動を提供するメーカー」となります。そして、「感動の提供とは、五感+ストーリーでおいしさを提供すること」となります。今の“変革の方向性”の言葉は、ひとつの仮説と考えておいてください。あとで、もっとよい言葉が出てくるかもしれません。
コンサル: 次に検討するのは、“コーポレートスローガン”です。“コーポレートスローガン”は、対外的には、我が社の提供する価値を表しますが、社内的には、社員のベクトルを合わせる言葉です。代表的な“コーポレートスローガン”は、アサヒビールの“すべてはお客様のうまいのために”でしょう。対外的には、うまいという価値を提供する会社だと表明しています。また、社内的には、うまいビール作りに、社員のベクトルが集約されているのです。K部長、若い発想で口火を切っていただけませんか。
K部長: 全員でおいしさの感動を伝える会社になりたいですね。
J部長: おいしさのストーリーを作る会社というのもある。
コンサル: I常務の意見はいかがですか。
I常務: 管理部門も共感できる言葉がほしい。作るというのは難しいが、伝えることならできる。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: 「おいしさの語り部」という意見に集約されてきたようです。ここでも、“コーポレートスローガン”を「おいしさの語り部」としておきましょう。
コンサル: いよいよ、本日のハイライトです。いままで、議論してきた“変革の方向性”“コーポレートスローガン”を踏まえて、5年後の我が社の姿を、模造紙に絵を描いていただきます。
全員: ・・・
コンサル: 絵を描くといっても、白紙の状態から、絵を描くのではありません。ここに、ビジネスや家族や動物や自然の絵の部品があります。この部品を活用して、5年後の我が社を描いてほしいのです。5年後の姿を共有するためには、絵を描き、全員で見て確認することが重要です。サンプルを見ながら、部品の切り貼りをして、さらに、皆さんで、コメントを加えてください。
コンサル: 絵を描くときの視点として、お客様との関係、仕入先との関係、仕事の進め方、社員の姿、家族との関係、会社の状態、地域との関係・・・ がありますが、基本的には、みなさんの話し合いにお任せします。
J部長: 絵なんて描くのは、小学校以来だ。
I常務: 絵は苦手だ。
H専務: 苦手なのは絵だけか?(笑)
 
  ☆いつの間にか、全員童心に返って、切り貼りをしています。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: すばらしい5年後の姿ができました。5年後の姿を描いてみて、いかがでしたか。
H専務: 将来のことについて、ここまで考えたことはなかった。
I常務: 絵に描くと、将来の姿がよくわかる。
J部長: なんか、できそうな気がする。夢が持てるようになった。
K部長: この絵に向かって、社員が団結できるとすばらしい会社になると思う。
コンサル: みなさんの取り組みをみていると、とってもワクワクしてきます。必ず、5年後の姿を実現させましょう。次は、5年後の姿を夢に終わらせないように、夢の具体化をしていきます。ここから先は、次回までの宿題です。絵で描いた5年後の姿(経営ビジョン)を具体化するために、5年後の「ターゲット顧客、商品、提供方法」を整理します。そして、5年後の姿を実現するために、取り組むべき課題を列挙してください。
 
プロジェクト終了後、G社長とコンサルタントは、次のようなやり取りを行いました。
 
コンサル: 今日、社長は、ひと言も発言されませんでしたが、経営幹部のみなさんの5年後の姿は、いかがでしたか。
G社長: 正直、みんながあそこまで将来のことについて、議論ができるとは驚きだ。将来の姿についても、納得できるところが多い。特に、K部長が、事前に話し合いの場をつくっていたとは、息子ながらほめてやりたい。
コンサル: ぜひ、ほめてあげてください。
コンサル: 将来の姿について、同意ができるのであれば、次回から、社長もプロジェクトのメンバーとして、議論に入られてはいかがですか。
G社長: 私が入ると、また、発言が少なくなるのではないですか。
コンサル: 将来の姿を実現するために、今まで通り、メンバーの発言を優先させてください。そして、解決策に困ったときに、助け舟をだしてもらいたいのです。
G社長: 彼らの発言を減らさないようにします。

社長が入ったプロジェクトは、どのように進化していったのでしょうか。

* *

コンサルティング物語

その5

〜経営課題を整理する〜

第4回目の検討会の前、K部長からの報告によると、“社長は、事業部長に対して相談することが多くなった”そうです。また、5年後の経営ビジョンを具体化する「ターゲット顧客、商品、提供方法」、さらに、「経営ビジョンを実現するための課題」についても、“事前に経営幹部内で議論した”ようです。


K部長: それでは、第4回目のプロジェクト会議を始めます。今回の宿題も、非常に難しかったので、経営幹部で事前に話し合いをいたしました。話し合った内容を軸にして、社長、コンサルタントのアドバイスをもらいながら、内容を深めていきたいと考えています。
コンサル: それでは、今回から、G社長には、オブザーバーという位置づけではなく、プロジェクトメンバーとして、議論にも参加していただきましょう。ただし、プロジェクトリーダーは、K部長ですから、K部長の進行にあわせて発言をお願いします。
G社長:K部長と、このような関係になることは初めてなので緊張する。しかし、みんなが描いた経営ビジョンのあるべき姿は、必ず実現したいと思う。  
コンサル: プロジェクトメンバーの皆さん、よろしいでしょうか。
※ 全員 頷く
コンサル: では、K部長、検討を進めましょう。
K部長: はい。「おいしさの語り部」として、会社のあるべき姿を具体的にイメージしてみました。まず、だれに対して「おいしさの語り部」となるのか、ターゲット顧客を整理しました。
K部長: ターゲット顧客イメージとして、最も大切にするべきことは、“おいしさ”に価値を感じる人です。
G社長: “おいしさ”に対する評価は、人それぞれの感性の問題だから、“おいしさ”で顧客を区分するのは、難しいのではないか。
コンサル: G社長、もう少し、K部長の報告を聴きましょう。K部長続けてください。
K部長: 私たちも、社長と同じ問題にぶつかりました。そこで、あるべき姿に立ち戻り、横軸に“おいしい”に価値を感じる(感じない)顧客、縦軸に我が社が“おいしい”と考える商品に価値を共感できる(共感できない)顧客を設定して、2軸分析をしました。そして、顧客が“おいしい”を重視して、我が社のおいしいを理解していただける顧客層を仮説的に設定したのです。
コンサル: その結果、どのような顧客層が浮かび上がってきましたか。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: そのような顧客層に、提供するべき商品・サービスは、どのような特徴のあるものですか。
K部長: ターゲットとする顧客層は、おいしいと訴えるだけの商品では、満足しない顧客層だと考えます。だから、提供する商品・サービスには、「商品・サービス+ストーリー」が必要だと思います。
コンサル: ストーリーとは、具体的にどのような内容でしょうか。
H専務: 例えば、「我が社のこだわり」「商品化した背景」「食べていただきたいシーン」「協力会社の技術力」・・・ このような意見がでました。
G社長: 「ストーリー」までは、今まで、私も取り組んできた。そして、競合他社も「独自のストーリー」を創ろうと必死になっている。我が社のあるべき姿を実現するためには、「ストーリー」だけでは物足りない。私は、あるべき姿の絵にある“顧客の笑顔”を実現するためには、ターゲットとする顧客層に「商品・サービス+ストーリー+[感動]」を提供しなければならない、そのように考えるが、みんなの意見はどうだ。
I常務: もう少し、具体的にイメージを教えてもらえませんか。
G社長: 私もみんなの議論を聴いて、イメージを膨らませている段階だ。例えば、[食材と食材の思いもかけないコラボレーション]、今は、創作系の食材の開発が主流だが、逆に、[先祖がえりした食べ方を提案する]、[捕れたところでしか食べられない食材を都会でも食べられるようにする]・・・ みんなで[感動]を提供するヒントを検討してみないか。
K部長: それでは、顧客が[感動]するヒントを検討しましょう。
コンサル: そうです。顧客が・・・ ですね。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: なるほど、いろいろなパターンやシーンが考えられますね。それでは、あるべき姿が実現されたとき、我が社は、どのようにして商品・サービスを開発して、顧客に届けているでしょうか。K部長、お願いします。
K部長: 我々が事前に検討した内容は、新しい食材を開発するために、[協力会社の数が2倍になっている][安全・安心を担保している][商品開発部門ができている][ネットを活用した直接販売のウエイトが30%を超えている][ストーリーを話せる営業マン、顧客の要望を聴くことができる営業マンが育っている]・・・。しかし、商品・サービスのイメージが変わりましたので、あらためて、検討する必要が出てきました。
K部長: 顧客が[感動]する商品・サービスを提供するために、今の協力会社との取り組みで良いのでしょうか、また、今の商品開発のプロセスで良いのでしょうか。
コンサル: K部長、いい悩みですね。一人で悩むのではなく、みんなの発言を求めて、どんどん議論を深めていきましょう。
K部長: J部長は、協力会社という立場も経験しているわけですが、どのような協力体制ができあがると、顧客が[感動]するような商品・サービスができるとお考えですか。
 
 ― 中略 ―
 
K部長: もう一つ、検討しておかなければならないことがあります。顧客が[感動する]商品・サービスを提供できる営業マンとは、どのような営業マンなのでしょうか。H専務は、どのようにお考えですか。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: 今回の議論で、我が社のあるべき姿の状態が、より具体化しましたね。今日、議論した中で出てきたキーワードは、あるべき姿の絵の中に書き加えてください。これは、宿題です。最後に、経営ビジョンを実現するための経営課題ですが、このテーマについては、どのような議論がありましたか。
K部長: 正直、ここまで議論ができていません。議論ができていたとしても、今日の議論を踏まえると、経営課題が次から次へと見えてきて、中途半端な議論では、役に立たなかったでしょう。
コンサル: 正直な感想、ありがとうございます。それでは、もう一度、あるべき姿の状態を振り返って、現在、できていない[考え方][仕組み][行動][能力][ノウハウ]等を抽出してください。これが、経営ビジョンを実現するための経営課題となります。たくさん書き出してください。K部長、お願いします。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: たくさん抽出されましたね。このままだと、経営課題に押しつぶされそうになりませんか。そうなっては困りますので、次回までの宿題として、経営課題を“選ばれている理由の背景”で検討したように、@顧客の視点、A業務プロセスの視点、B組織と人の視点、Cリーダーシップ(理念・ビジョンの浸透)の視点、D財務の視点 に分類してください。そのうえで、重要だと考える課題を10個抽出して、重要度をつけてください。その10個が経営ビジョンを実現する重要成功要因となります。

このようにして、F社では、経営課題を抽出しました。プロジェクトメンバーは、どのような重要成功要因を抽出して、解決に向けた取り組みを始めるのでしょうか。次回、ご報告します。
今回の議論の間、G社長は、当初、自分の主張を強引にする場面もありましたが、可能な限り発言を控えているようでした。少しずつ、プロジェクトメンバーに対する信頼感が高まってきたのだと感じています。

* *

コンサルティング物語

その6

〜重要成功要因を整理する〜

いよいよ、経営ビジョンを実現するために、具体的な取り組みを検討する場となりました。ここからが、経営ビジョン実現に向けて、経営幹部が変われるか、組織が変革できるか、正念場となります。経営幹部の間で、総論賛成、各論反対の意見がでて、議論が進まなくなる企業もあるのです。F社の場合は、どうだったのでしょか。

コンサル: K部長、課題を10個に絞れましたか。
K部長: まず、プロジェクトメンバー全員が納得する課題を7個抽出しました。そのあと、3人が納得する課題が6個、どうしても、13個までしか絞り込めませんでした。
コンサル:では、優先順位はいかがですか。
K部長: それが、議論していくうちに、すべてやらなければならない課題に見えてきて、優先順位がつけられなかったのです。
G社長: 皆には、「最後は私に決めてもらおう」という甘えがあるのではないか。
コンサル: H専務、社長のご意見はいかがですか。
H専務: それはないと思います。皆で議論をして、なかなか結論がでなかったのです。それで、今日、この場でもう一度議論しようということになったのです。
コンサル: I常務のご意見は
I常務: ・・・
コンサル: 実は、私も社長と同じ想いを持っています。第三者から見ると、前回のプロジェクト前の会議によるアウトプットと比較して、皆さんのトーンが落ちているように見えます。具体的な取り組み内容を議論する場になって、経営ビジョン実現に向けた皆さんの腰が引けていませんか。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: では、プロジェクト前の会議において、どこで議論が行き詰まったのか、振り返ってみましょう。どこまで、議論が進んだのですか。
K部長: 経営課題を5つの視点毎に分類することは、多少の紆余曲折はありましたが、分類することができました。その中から、10個の課題に絞り込むときに、全員が賛成した課題として、7個の課題に絞り込むことができました。その後、3人が賛成した課題を6個抽出したのですが、3個を排除して、合計10個の課題に絞り込むことができなかったのです。10個に絞り込めないのであれば、まず、最初の7個の課題について、優先順位をつけようという意見がでて、最初の7個に対して、優先順位をつけようとしたのです。
コンサル: その7個の課題が、ここに記述されているテーマですね。
K部長: そうです。@市場・顧客の情報を収集して、商品開発に活かす。A商品開発プロセスを「見える化」する。B協力業者との関係を強化する。C語り部となる人材を育成する。D工夫する社員を育成する。E社長の商品開発ノウハウを共有する。Fユニークな企業文化をつくる。この優先順位が決まらないのです。
コンサル: なぜ決まらないのでしょうか。
J部長: どの課題も重要なのです。でも、経営幹部が担当する部門によって、優先順位が違うのです。H専務は、@が優先順位の一番ですし、K部長は、Aが優先順位の一番なのです。
コンサル: なるほど、今、経営幹部である皆さんにとって、最も大切な課題が抽出されています。担当する部門によって、皆さんの優先順位が違う、そのことで優先順位づけができないということは、皆さんの認識が、部門長の認識から脱皮できていない、ということなのです。本来は、経営幹部として、会社全体の視点から、この課題の優先順位づけに取り組まないといけないのです
コンサル: では、こうしましょう。7個の課題から、5個の課題に絞ってください。そして、5個の課題から3個の課題に絞ってください。最後に、3個の課題から1個の課題に絞ってください。社長も入って、皆で、話し合って決めてください。7個の課題から、1個を選ぶのはルール違反です。必ず、7個から5個、5個から3個、3個から1個のステップを守ってください。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: 最後は何が残りましたか。
K部長: 皆との話し合いの中で、最後に残ったのは、「社長の商品開発ノウハウを共有する」でした。
H専務: 我々一人ひとりが「おいしさの語り部」となって、「商品・サービス+ストーリー+感動」を提供するためには、まず、「社長の商品開発ノウハウを共有する」ことが最重要成功要因だと考えました。今まで、我が社の成長を支えてくれた、「社長の商品開発ノウハウ」を共有する、そして、我々が、「おいしさの語り部」として切磋琢磨することによって、他の6個の課題も解決できると確信しました。
J部長: 「社長の商品開発ノウハウを共有する」ことによって、商品企画はもちろん、営業も工場も管理も成長できると考えます。
I常務: 管理部門では、人材育成という視点で、「社長の商品開発ノウハウを共有する」ことに取り組みたいと考えました。
コンサル:  いかがですか、少し、皆さんの目線が、部門長から経営者に、変化したのではないでしょうか。さらに、「社長の商品開発ノウハウが共有されているか、されていないか」について、どのような指標で測定するべきでしょうか。また、変革の目標として、どのような数値や状態を設定すればよいか、考えなければなりません。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: 評価指標や目標が設定されましたので、次に、「社長の商品開発ノウハウを共有する」ために、具体的な活動計画に落とし込みます。@顧客の視点で、A業務プロセスの視点で、B学習と成長の視点で、Cリーダーシップの視点で、D財務の視点で、誰が、いつから、何をするべきか、皆さんで話し合ってください。
コンサル: さらに、「社長の商品開発ノウハウを共有する」取り組みの進捗状況にあわせて、残りの6個の課題に対しても、課題解決に向けた取り組みをはじめなければなりません。

このようにして、最重要成功要因、重要成功要因が整理され、活動計画への落とし込みが、次のプロジェクトまでの宿題となりました。

 F社においても、経営幹部の方々の認識が、部門長レベルの認識であったために、自分の担当部門の立場からの議論しかできず、全社的な改善策の議論が進まなくなる恐れがありました。しかし、コンサルタントの対応によって、少し、高い目線から議論ができるようになり、変革に向けた取り組みについても、合意を得ることができました。

 次回の報告が、今回のテーマの最終回となります。経営ビジョンを実現するストーリー「成功物語」について、報告します。

* *


コンサルティング物語

その7

〜成功物語を描く〜

経営ビジョンプロジェクトの検討も大詰めを迎えました。
経営ビジョンを実現する戦略策定の総仕上げとして、「経営ビジョンを実現していく成功物語」を描くステージに入ります。幹部社員を育成するという視点からは、幹部社員一人ひとりが、経営ビジョンを実現することに対して、自分の問題として認識できるかがポイントになります。

コンサル: 経営ビジョンプロジェクトも最終仕上げの段階となりました。経営ビジョンを実現する成功物語を描いて、経営ビジョンだけでなく、経営ビジョンを実現するプロセスまで、幹部社員で共有していきます。
コンサル: 成功物語を描く前に、前回のプロジェクトで宿題になっていたことを整理しましょう。残り6つの課題に対して、評価指標、目標数値・状態、そして活動計画について発表してください。
K部長:では、私から発表します。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: なるほど。議論した熱意と深さが感じられますね。社長、いかがですか。
G社長: 良く考えたものだ。個々の活動に対して、幹部社員一人ひとりが、責任者として位置づけられているのが良い。ただ、多くの活動が、来月からスタートすることになっているが、物理的にできるのか。皆の気持ちはわかるが、実行できなければ意味がないぞ。
コンサル: 社長の言うとおりです。活動計画全体の物理的・時間的なバランスを考え、活動内容に対して、時間軸で優先順位、スタート時間を見直しましょう。もう一度、検討をお願いします。活動計画を精緻化しましょう。
 
 ― 中略 ―
 
G社長: ありがとう。修正された計画であれば、経営ビジョンの達成が見えるようだ。問題に気づき、修正できる姿は頼もしく見える。
コンサル: 社長も褒めるのが上手になりましたね(笑)。
G社長: これが、私の本来の姿だ(笑)。
コンサル: それでは、社長の言う「経営ビジョンの達成が見えるようだ」の言葉を、実際に「見える化」していきましょう。具体的には、経営ビジョンを実現する成功物語を描いて、経営ビジョンだけでなく、経営ビジョンを実現するプロセスまで、皆さんで共有していきます。
 ただ、その前に、経営ビジョンプロジェクトで、今までに議論してきた流れを振り返っておきましょう。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: では、経営ビジョンプロジェクトの最終仕上げ、成功物語を作成します。サンプルを見てください(サンプルの掲示は割愛します)。成功物語の構成は、@経営ビジョンが達成されている状態、A経営ビジョンを達成するまでの取り組み、B社長から社員への呼びかけ となります。
 成功物語の作者の立つ位置は、我が社の5年後です。そして、成功物語のストーリーは、5年後から現在を振り返る内容となります。従って、文章の書き方は、基本的には、現在進行形(◎◎を継続している)、あるいは現在完了形(△△となっている)もしくは過去完了形(□□ができた)となります。一方、願望(○○したい)や意思表示(**するつもりだ)の言葉は使いません。
コンサル: 少し、サンプルで確認しましょう。@経営ビジョンが達成されている状態として、「我が社では、□□ができたことにより、△△ができる状態になっている。(中略) このような我が社に対して、お客様からは、$$という評価を頂けるようになっている」と記述されており、A経営ビジョンを達成するまでの取り組みについては、「顧客の視点では、1年目から、++に取り組んできた。1年目では、%%までしかできなかったが、2年目以降に&&ができるようになった。その活動は、現在も継続され、意識改革の原動力になっている。業務プロセスの視点では、(中略) これらの活動を積み上げたことによって、経営ビジョンが達成できたと考えている」と記述されています。さらに、B社長から社員への呼びかけでは、「夢のある経営ビジョンを実現するために、全社一丸となって、経営戦略に取り組むことによって、成功物語を勝ち取ろうではないか」と呼びかけています。
G社長: 成功物語は、非常に、ハードルが高くないか。
コンサル: 確かに、ハードルは高いのですが、社長がおっしゃる「経営ビジョンの達成が見えるようだ」を「見える化」するわけですから、社長を含め、幹部社員が一丸となれば大丈夫です。カッコいい成功物語を作る必要はありません。皆さんが納得できる、一致団結できる成功物語を作ることが重要なのです。
コンサル: まず、社長を含め、一人ひとりが、成功物語の@とAを記述してください。その後、発表し合って、幹部社員の方の中で、軸となる成功物語を選んでください。その際、社長の成功物語は発表しないでください。社長が発表すると“社長の案で決まり”となりますから(笑)。選ばれた成功物語を軸に、全員で肉付けをしていきます。社長は、幹部社員が選んだ成功物語を肉付けするサポートをお願いします。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: では、K部長、集約した成功物語を読み上げてください
 
(K部長が全員で作り上げた成功物語を読み上げる)
 
コンサル: ありがとうございます。皆さんの英知が集まった成功物語になりました。
社長、いかがですか。
G社長: いや〜 これだけの成功物語ができるとは思っていなかった。ハードルが高いと言ったことが恥ずかしい。私が普段言っていること、こだわっていることに対する議論も進み、成功物語の中に、私の想いが盛り込まれた。プロジェクトメンバーにお礼を言いたい。
コンサル: H専務、他の皆さんの感想はどうですか。
H専務: 社長と一緒に、この会社を立ち上げてきたが、いつの間にか、社長に“おんぶ”に“だっこ”になっていたことを痛感しました。特に、このプロジェクトにおける、K部長の成長が頼もしかった。
I常務: 私は、経理・財務しか見ていませんでした。はじめて、会社全体のことが分かった気がきます。本当にありがとうございました。
J部長:  言われたものを作ることが私の仕事だと思っていました。また、どこかで、外部の人間という負い目があったのも事実です。しかし、今回のプロジェクトで、初めて、本当の仲間になれたような気がします。
コンサル: 最後に、プロジェクトをまとめてこられたK部長の感想はいかがですか。
K部長: 最初、一番若い自分が、このような大役を任されて大丈夫かと、正直不安でした。しかし、社長はじめ、役員の方々に尻を叩かれ(笑)、それ以上に、皆さんの協力をいただき、ここまで作り上げることができました。本当に、ありがとうございました。
 
コンサル: 本当に、チームの力で、ここまで作り上げることができましたね。お疲れ様でした。
コンサル: ただ、最後の最後に、もうひと踏ん張りが必要です。方針発表会をいつ開催されますか。また、その内容を決めなければなりません。そして、その日に向けて、どのような準備をしていきますか。このプロジェクトは、方針発表会で、経営ビジョン、経営戦略、そして成功物語を発表して解散となります。
K部長、もうひと踏ん張り、お願いします。
 
 ― 中略 ―
 

F社では、この後、経営方針発表会を開催して、プロジェクトメンバーが中心となって、全社員に対して、経営方針の発表をおこないました。方針発表会までの間、プロジェクトメンバーは、検討内容の整理を進め、成功物語の精緻化をおこなったのです。
 方針発表後は、プロジェクトメンバーが、活動計画の実行責任者として、経営ビジョンの実現に向けて取り組んでいます。

「経営ビジョンをつくる −経営ビジョンの策定を通じて幹部社員を育成する−」は、今回で終了します。次回からは、「受注案件を管理する」を掲載します。お楽しみに・・・

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