コンサルティング物語

事業変革の現場から

EME「コンサルティング物語」は、コンサルティングの現場を物語風にアレンジしたものです。
コンサルタントの役割を身近に感じて頂けるように、EMEの新しいチャレンジです。

 事業変革の現場から −社員意識調査・役割認識調査を活用する−


コンサルティング物語

その1

〜 事業変革を阻害するもの 〜

事業の変革を志す経営者は、非常に多い。しかし、事業の変革が思うように進んでいない企業も、同様に、非常に多いのである。では、変革できる企業と変革できない企業の違いは何であろうか。言い換えると、事業の変革を阻害している要因を考えてみたい
事業の変革が推進される必要条件は、@経営者が考えている変革の方針・ビジョン・戦略を「経営者から一般の社員まで理解して行動に展開されていること(このような状態を「浸透」という)」、A経営者が考えている変革の方針・ビジョン・戦略を「部門間に温度差がなく、行動に展開されていること(このような状態を「展開」という)」である。
 しかし、浸透と展開がトップダウンだけで、推進されているとすると、社員は主体的に考えて、事業の変革に取り組むだろうか。皆さんもお気づきの通り、トップダウンだけでは、社員は、会社に対して意見を言わなくなり、指示待ち社員が横行して、事業の変革は進まないのである。従って、事業の変革が推進される十分条件は、浸透と展開を推進する場面で、社員の意見が十分に反映されていることである。

EMEでは、事業の変革の阻害要因である、社員の認識ギャップとその背景を知るために、社員意識調査と社員認識調査を行っています。

  • 社員意識調査・役割認識調査の目的は、
    1. 会社が大切にしている考え方・あるべき姿・企業としての取り組みに関して、現状における社員の理解や社員の実際の行動について、正しく認識すること
    2. 特に、経営幹部や管理者にとっては、自分の期待・行動スタイルと、部下の受け止め方の違いを認識すること
    3. その上で、組織変革に向けた、経営理念・経営ビジョン・経営戦略の構築と浸透における課題を明確にする
  • ことにある。
  • 社員意識調査の設問内容は、
  • ◎ 経営理念・経営ビジョンの浸透を中心として、
  • ◎ 顧客にとって良い会社であるのか(顧客本位)
  • ◎ 社員にとって良い会社であるのか(社員重視)
  • ◎ 良い会社となるための仕組みがあるのか(付加価値創造の仕組)
  • について、20項目の質問で構成されている。
  • (「社員意識調査・役割認識調査」提案書より)

今回のコンサルティング物語では、「社員意識調査・役割認識調査」を活用することによって、社員との認識ギャップとその背景を知り、事業の変革の推進速度を速めていった企業の事例を紹介したい。


A社は、年商約30億円 100年を超える業歴を持つ、加工食品卸売業の老舗企業。近年、海外からの低価格商材が乱立しており、A社も卸売業としての存続が危ぶまれていました。このような環境の変化をいち早く認識していた、A社の社長であるB氏は、10年前から、商品開発機能を持った卸売業(工場を持たない製造業:ファブレス企業)を目指して、事業革新に取り組んできました。しかし、取り組みから10年を経た現在でも、自社開発商品(プライベート商品)の売上高は、10%を超えず、事業革新は遅々として進んでいなかったのです。


B社長: 10年前から、プライベートブランドの売上比率50%を目指して、商品開発室を設け、海外の提携工場も開発するなど、ファブレス企業への脱皮に取り組んできた。しかし、プライベートブランドの商材を開発しても、在庫を増やす結果となり、市場に受け入れられる商材の開発は進んでいない。その結果、前期も、プライベートブランドの売上比率は、10%に留まっている、なんとか、この負の連鎖を断ち切って、事業革新を進めないと、我が社の将来はない。
コンサル: 社長は、ファブレス企業を目指して、商品開発室を設け、海外の提携工場も開発してこられました。そして、将来ビジョンとして、プライベートブランドの売上比率を50%以上に高める構想を明確にしています。しかし、事業の転換が進まない。その原因を社長は、どのようにとらえられていますか。
B社長:自分としては、事業の転換に、打つべき手は打ってきたつもりだ。しかし、肝心の社内が燃えない、何かが足りない。
コンサル: お話を伺って、私には、「社長の想い、社長の危機感」が力強く感じられます。しかし、一方では、社長の想いが社員に伝わっているか、想いが強ければ強いほど、心配になります。また、プライベートブランドを開発して、在庫が増えていることは、社長の想いと市場の期待あるいは現場の認識にギャップがあるのではないでしょうか。
B社長: 確かに、何かが足りないと思っていた。しかし、コンサルタントが言うような視点で、社内や市場を見ることはなかった。
コンサル: そこで、ご提案です。社長のお考えや大切にしていることが、「どれだけ、社内に浸透しているのか」を調査する「社員意識調査」をしては、いかがでしょうか。
B社長: そのような調査方法があるのであれば、ぜひ教えてもらいたい。
 

このようにして、A社において、「社員意識調査」が始まりました。その結果は、どのような内容だったのでしょうか。次回、ご報告します。

* *



コンサルティング物語

その2

〜 社長及び経営幹部・管理職者・一般社員の認識とギャップ 〜

企業経営においては、さまざまな調査が行われる。しかし、正しい方法や手順で調査がおこなわれないと、出てくる答えは、現状を反映していないものとなる。現状を反映していないアウトプットを信じて意思決定するほど、怖いものはない。特に、「社員意識調査」は社員の気持ちや認識を調査するのであるから、なおさら慎重な対応が求められる。
筆者の経験でも、ある企業の結果に対して納得いかなかったので、徹底的に調査すると、複数人の一般社員の方が、幹部社員用のシートに記述していた という初歩的なミスに遭遇したことがある。
A社においても、経営幹部、リーダーを対象に、意識調査方法のレクチャーから始められた。


コンサル: 社員意識調査の目的は、いま述べたとおりです。
コンサル: では、具体的な調査の手順をお話しします。
「社員意識調査」では、“経営幹部・上司用の質問シート”と“一般社員・部下用の質問シート”を使います。
質問シートには、「経営理念・経営ビジョンの浸透」「顧客本位」「社員重視」「付加価値創造の仕組」に関する20項目の質問が用意されており、5段階評価で回答するようになっています。
まず、“経営幹部・上司用の質問シート”では、質問項目ごとに、「あなたは、社員や部下に対して、○○をしていますか」という問いかけをおこなっています。一方、一般社員・部下用の質問シート”では、「あなたは、会社や上司から、○○をしてもらっていますか」という問いかけがおこなわれています。
社長及び経営幹部の方は、“経営幹部・上司用の質問シート”に回答願います。また、一般社員の方は、“一般社員・部下用の質問シート”に記入願います。一方、管理者・リーダー層は、部下でもあり、上司でもあることから、部下の立場で、“一般社員・部下用の質問シート”に記入願います、また、上司の立場でも“経営幹部・上司用の質問シート”に記入願います。
 
 ― 中略 ―
 
 注:詳細は http://www.emejp.com/support/member2.html を参照
 

A社では、早速、アンケートの実施、回収、そして、コンサルタント会社で分析が行われた。

【全体の傾向】
社長の平均点 4.2
経営幹部(社長を除く)の平均点 3.5
部下としての管理者の平均 3.2
上司としての管理者の平均 3.0
一般社員の平均点 2.8

 
コンサル:社長の認識と一般社員の認識に大きなギャップがありますね。また、社長の認識と部下としての管理者の認識にもギャップがあります。これは、社長の想いが、社員にまで伝わっていないこと、さらに、管理者にもキチンと伝わっていないことを表しています。
また、社長の認識と経営幹部の認識にもギャップがあります。経営幹部の方々も、社長の代弁者になりえていないように思えます。もう一点、大切な指摘は、部下としての管理者の認識と上司としての管理者の認識を比較すると、上司としての管理者の認識の方が低いということです。部下としては、社長や経営幹部の姿勢や行動を評価しながら、自分は部下(一般社員)に対して、社長や経営幹部の姿勢や行動を継承できていないという認識なのです。客観的な言い方をすると、経営陣と一般社員を結び付ける管理者が育っていない といえるのです。
社長の認識と経営幹部の方々・上司としての管理者の方々の認識のズレが、一般社員との認識のギャップとなって、あらわれているのではないでしょうか
B社長: 社員の認識が、ここまで低いとは思いもよらなかった。コンサルタントの指摘は、厳しい指摘だが、数字で表れている以上、見つめ直さなければならないと思う。二人の幹部は、今回の指摘に対して、どのように感じているのか。
C営業部長: 私も意外な結果だと思います。社員に、社長の想いが伝わっていないとは思いません。社長は、自分のビジョンや方針を明確に打ち出していますし、社員ともよく話をされています。
B社長: そんな評論家的な答えはいらない。いくらビジョンや方針を打ち出していても、実現できなければ、何もしていないのと同じだ。現実的に、10年前からPB比率を50%以上にすると宣言しているにも関わらず、10%前後で停滞しているではないか。営業部長として、反省するところはないのか。
C営業部長: ・・・
D管理部長: 私は、この結果は、その通りだと思います。我が社は、干物の行商を始めた初代から、小さな乾物問屋だった会社を飛躍的に伸ばしたのが先々代です。そして、成長した会社を引き継いだのが先代、しかし、先代は、非常にワンマンな方でした。私たちの同僚もたくさん退職しました。そんな中、外の会社での修行から帰られた社長が、先代の反対を押し切って、商品開発を始めたのです。そして、5年前、社長に就任されました。
私は、社長の考えていることは、正しいと思います。しかし、社長の言葉がよくわかりません。営業部長も評論家的な意見を言っているのではなく、ただ、頑張っているのだと思います。中間管理職が育っていないのも事実だと思います。社長から、多くの刺激を受けていますが、それを、どのようにして展開すればよいのか 分からないように思います。
コンサル: なるほど、我が社の歴史が、今の良い面も悪い面も作り上げてきた、と言っても過言ではないですね。歴史のある会社だけに、過去とキチンと向き合わなければ、現在の問題は解決しないということです。今、管理部長が言ったことを検証するためにも、質問の項目別に分析をすすめましょう。
 

いよいよ、項目別の分析に入ります。どのような実態が見えてくるのでしょうか。次回、報告します。

* *



その3

〜 項目間の認識結果と階層別のギャップ 〜

コンサルティング物語

社員意識調査は、20個の質問項目で構成されている。階層別の認識ギャップを分析する場合、着目するべきポイントは、以下の通りある。
◎平均点の高さとギャップの大きさ
 ○両方の平均点の高さに着目する
  ・両方とも平均点の高い項目
  ・両方とも平均点の低い項目
 ○1.0以上のギャップのある項目に着目する
 ○上司の評価が部下の評価よりも低い項目に着目する

【A社の主要な項目の結果】
※数値の左から、
 社長、経営幹部(社長を除く)、部下としての管理者、上司としての管理者、一般社員の数値である。
企業理念・ビジョンの浸透 [5.0 3.6 3.3 3.0 2.8]
現場の意見の尊重 [5.0 3.4 3.0 3.2 2.5]
褒められる・認められる の体験 [4.0 3.2 2.5 3.0 2.0]
社内における自己の存在感・ポジショニング認識 [4.0 3.0 3.4 2.8 3.2]
公平な評価 [4.0 3.8 3.0 3.2 2.6]


コンサル: 社長は、“企業理念・ビジョンの浸透”に対して、非常に自信を持っていらっしゃいます。しかし、一般社員は、低い評価しかしていません。やはり、経営幹部や管理者の方々が、社長の代弁者として機能していないようです。また、“現場の意見の尊重”については、管理者は現場の意見を吸い上げようとしている姿勢が見られますが、管理者も一般社員も現場の意見が社長には届いていないという認識です。一方、管理者も一般社員も“自己の存在感”については、プライドを持っているようですが、ほとんど“褒められた経験”がないようです。現場のリーダーとしては、部下を認めていこうとしているようですが、会社全体に、モチベーションを高める“褒める・認める”文化がないようです。現場では、汗水垂らして仕事しているにもかかわらず、自分たちの意見を聞いてもらえない、あるいは認めてもらえない、という不満が“公平な評価”に対する不満につながっているのではないでしょうか。
 
 ― 中略 ―
 
B社長: 社員が、この認識では、いくら経営体質を変えようとしても、変革が進まないわけだ。営業部長、管理部長がしっかりしていないから、このような結果になっているのではないか。
C営業部長:・・・
D管理部長: ・・・
B社長: 仕入課長は、この結果に対して、どう思うのか
E仕入課長: 私は、さきほど、管理部長が言ったとおり、この結果が、我が社の状態、そのものだと思います。我が社の社員のモチベーションは、非常に低くなっていると思います。
B社長: なぜ、社員のモチベーションが下がっているのだ。
コンサル: チョット待ってください。社長は、さきほど“数字で表れている、現実を見直さなければならない”とおっしゃっていました。しかし、私には、結果だけを認めていて、その数字の背景を認めていない、あるいは数字の背景を理解されていないように見えます。
B社長: どういうことですか。
コンサル: 社長は、意識調査の結果の背景となっている原因を、上位職者、特に幹部社員に向けて追及していらっしゃいます。
B社長: 私に問題があるというのですか。
コンサル: 社長だけに問題があるとは言っていません。社員は、社長の鏡です。社長自身のリーダーシップのあり方に問題がなかったか、振り返っていただきたいのです。
B社長: 私のリーダーシップですか。先代の社長は、K(経験)K(勘)D(度胸)のワンマン社長でした。私は、卸売業だけでは将来がない、と思い、ファブレス企業(工場を持たないメーカー)への転換を図ったのです。また、科学的な経営が必要だという想いから、経営幹部と経営ビジョンを描き、経営戦略を立案してきました。そして、目標値を設定して、進捗管理もしてきました。しかし、業績の未達成は続き、体質はほとんど変わっていません。“公平な評価”に対する一般社員の評価が低いですが、今の状態で、どのようにして公平な評価をしろというのでしょうか。
コンサル: 社長、本音で話をしていただき、ありがとうございます。D部長、経営幹部と経営ビジョンを描き、経営戦略を策定されているようですが、どのような議論が行われていますか。
D管理部長: 申し訳ありません。我々が意見を出さないものですから、ほとんど、社長が決めています。
B社長: 彼らの意見を待っていると、時間がどんどん過ぎてしまいます。非常にもったいないのです。
コンサル: C部長、どうして意見が言えないのでしょう。
C営業部長: 先代の社長の時から、我々は、社長の言うとおり、商品を販売してきました。しかし、今、社長が掲げる商品は、社長の言うとおりに販売しようとしても、我々の力では売れないのです。また、先代の社長の時は、社長に口答えすることも、できませんでした。それが、急に、意見を言えといわれても、何をどう言ったらよいのか、よくわかりません。
コンサル: しかし、営業部長として、長年の豊富な経験から、販売したいものとかあるのではないですか。
C営業部長: ・・・
D管理部長: 私たちが意見を言っても、それはダメだ。と一蹴されてしまいます。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: 企業が変革していくうえで重要なポイントは、経営者と経営幹部が一枚岩になっていることです。そこで、もう一つ調査をお願いします。役割認識調査といいます。社長は、C部長、D部長、次期幹部候補のE課長に対して、それぞれ期待している役割を3項目ずつ抽出してください。そして、その役割ごとに、なぜ、その役割を期待しているのか、理由を書いてください。
コンサル: 一方、C部長、D部長、E課長は、自分が社長から期待されていると思う役割を3項目ずつ抽出してください。そして、その役割ごとに、今自分が行っている活動を具体的に書いてください。
コンサル: それでは、1週間後に、各自で私宛に提出してください。
 

社長と経営幹部との間の、非常に、本質的な問題が見えてきました。しかし、社長自身は、その問題の重要性に、まだ、気付いていないようです。そこで、コンサルタントは、社長と経営幹部の認識ギャップを「見える化」するために、役割認識調査を実施しました。社長の問題認識に変化は起こったのでしょうか。次回、報告します。

* *


その4

〜 役割認識のギャップ 〜

コンサルティング物語

組織とは、創業時においては、「社長個人」あるいは「社長以下数人の共同体」であったものが、企業の成長と共に機能が分化してきたものである。従って、個が分化したものであるから、本来は、「リーダーが求める(あるいはリーダーが“任せている”と認識している)部下の役割」と「部下が認識している自分の役割」が一致していなければならない。例えば、A社の場合、B社長が売上高において、プライベート比率を30%にあげるという方針を出したならば、C営業部長は、プライベート比率を30%に上げる対策を考え、実行しなければならないのである。しかし、一体感のない企業においては、社長が経営幹部に求める役割認識と経営幹部が認識している役割認識に、大きなギャップを起こしており、その結果、社長が考えている通り、変革が進まないのである。
 役割認識調査の結果を踏まえて、A社の実態を考察してみよう。


コンサル: アンケートの結果、B社長と部門長の皆さんとの認識の違いを数多く発見しました。しかし、アンケートの結果は、社長も含め、皆さんを責めるものではなく、解決策を見つける情報だと認識してもらいたいのです。だから、はっきり名前を出して議論することが大切だと思います。例えば、下記のような回答がありました。皆さんは、どのように考えるでしょうか。番号は、優先順位です。
* *

役割認識ギャップの結果です(B社長とC営業部長)。
NO 名前 役割 委譲する理由/具体的行動
1 B社長 PB比率の達成 A社が生き残るため、営業構造を変える
 
C営業部長 売上高目標の達成 各部門の売上実績の管理と目標達成に向けて指示をだす

C営業部長: 営業部門は、A社の売上高に対して、責任を持っています。従って、私は、売上高目標の実現が一番重要な役割だと認識しています。
B社長:C部長、まだ、そのような認識をしているのですか。経営幹部と作り上げている「経営方針」にも“PBブランド比率の達成”を最重要課題に掲げているではないか。
C営業部長: たしかに、「経営方針」には“PBブランド比率の達成”を最重要課題と掲げています。当然、ブランド別の売上高目標も設定しています。しかし、毎年、PBブランドの達成状況を、優先的に検討するのは、第一四半期までです。少し、売上高の達成状況が悪くなると、会社としての売上高目標の検討が優先的な検討事項になっています。
コンサル: 時間とともに、優先的に管理する対象が変わるということですか。
C営業部長: 結局、私の役割としては、売上高目標の目標の達成が、優先順位の一番ではないかと考えています。
B社長: 折角、PB商品を開発しても、営業部門がしっかりPB商品を売らないから、結果、売上高重視となるのです。
コンサル: 売上高とPB商品比率、どちらを優先的に考えるか、あるいは、PB商品比率を高めながら、売上高目標あるいは利益額目標を実現していくのか、非常に難しい問題です。PB商品の販売戦略ついて、営業部長と、日々、話し合いが行われていますか。
B社長: あまり、話し合ったことはありません。私が、指示することがほとんどです。
コンサル: 営業部長は、PB商品の販売は、社長の役割だと思われていませんか。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: 次に、D管理部長の役割認識を検証しましょう。
* *

役割認識ギャップの結果です(B社長とD管理部長)。
NO 名前 役割 委譲する理由/具体的行動
1 B社長 自分の意思決定支援 経営者の目線で、自分の意見を言ってもらいたい
 
D管理部長 経営者のサポート 社長の冠婚葬祭を代行する

D管理部長: 期待されているのはわかります。しかし、言えないのです。
コンサル: 何が、言えなくさせているのでしょうか。
D管理部長: 言っても、結局、社長は自分の都合で判断される。社長は、私たちに「自分の意見を言え」とおっしゃいますが、自分の都合の良いことしか聞いていないのです。都合の悪いことを言うと、「おまえは、まだ、わかっとらん」の一言でおしまいです。
コンサル: だから、経営幹部の方々も「現場の意見の尊重」「褒められる・認められる の体験」「社内における自己の存在感・ポジショニング認識」のポイントが低くなっているのでしょうか。
D管理部長: そうだと思います。
B社長: チョット待ってください。それでは、私一人が悪者ではないですか。会社を変革するために、PB商品を開発し、組織を変革して、販売体制も強化してきた。また、幹部と戦略を練り、ファブレス企業(工場を持たないメーカー)に脱皮する道筋をつけてきたではないですか。なぜ、私一人が悪者なのですか。
コンサル: いえ。社長一人が悪者だとは思っていません。しかし、今の厳しい状況から脱皮するためには、社内外に最も影響力のある方、つまり、社長から、自己を振り返り、リーダーシップのスタイルを変えなければならないのです。影響力があるという点では、経営幹部の皆さんも同様です。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: 社長と経営幹部の間で、これだけのギャップがあれば、現場は相当混乱していると思われます。例えば、営業の現場において、社長の指示は、「PB商品を売れ」という、一方、売上高を重視する営業部長の指示は、「NB(ナショナルブランド)商品を販売してでも、売り上げをあげろ」という、どちらの指示に従ったらよいのか、現場は迷います。そのために、社員のベクトルが合わず、モチベーションが低下して、一層、業績が悪くなるような環境になっていないでしょうか。
コンサル: そこで、B社長にお願いがあります。アンケート結果の裏付けをキチンと把握するために、現場の社員に対して、ヒアリングをおこないたいと思います。
B社長: 我が社の社員にとって、ヒアリングを受けるというのは、初めての経験です。ヒアリングしていただいても、本当のことを言うでしょうか。
コンサル: 大丈夫です。現場の社員を評価するために、ヒアリングするわけではありません。A社の現場で起きている事象を、事実として把握するために、ヒアリングをおこなうのですから。
 

このようにして、A社の管理職、現場の社員に対して、ヒアリングが実施されました。その結果、どのような発言を得られたのでしょうか。ヒアリングの結果については、次回ご報告します。

* *


その5

〜 社員へのヒアリング 〜

コンサルティング物語

社員意識調査・役割認識調査によって見えてきたA社の実態を仮説的にとらえると、先代から事業を引き継いだB社長は、@経営者としての感性でA社を引っ張ってきた先代の経営から、経営ビジョンと経営戦略を科学的に立案して実行するマネジメント型の経営に変革しようとしているが、AB社長の想いが、経営幹部をはじめ社員に対しても、正しく伝わっておらず、B結果として、現場の統一性がなく、変革が遅々として進んでいない、さらに、C経営者の強いトップダウンによるリーダーシップによって、社員に認められ感や存在認識が乏しく、モチベーションの低い状態が続いている と推察される。
このような仮説に対して、現場の意見は、どうだったのだろうか。ある営業部門でのヒアリングの状況を報告する。


コンサル: 先日実施した“社員意識調査アンケート”から、(省略)のような数多くの問題を指摘しています。特に、トップの方針が浸透していない、あるいは、部門間の協力関係が乏しい といった、コミュニケーションの問題を指摘しています。まず、コミュニケーションという視点から、仕事を進めるうえで困っていること、あるいは改善してほしいことから、教えてもらえますか。今日、私は、現場の実態を教えてもらうために、この場にいますから、[だれが、どのような発言をしたか等]は、報告しませんので、安心して、現状の事例をそのままお話しください。また、皆さんも、この場で、[だれが、どのような発言をしたか等]は、外に出さないようにお願いします。
f社員: 先日も、新しい商品を開発したから売ってこい、という指示がきました。しかし、なぜこの商品が生まれたのか、だれをターゲットに販売するのか、全く示されていません。ただ、調理方法、調理例が書いてあるのですが、売り先は、営業マンが考えろと言わんばかりです。
g社員:お客様は、私どもが持っていく提案の中から、商品を選びたいのです。だから、PB商品だけを特別扱いして販売することができないのです。だから、PB比率を上げろといわれても難しいのです。
h社員: そのことを営業部長は、一番よく知っているので、我々に対して“PB比率をあげろ”とは言われないのだと思います。
コンサル: それでは、社長方針に反するのではないですか。
f社員: 社長は、現場を知らないのです。社長は、入社をされてから、数年間、営業をしていましたが、大きな実績をあげてきませんでした。その後、物流、そして、商品開発に移って、商品開発に力を入れ始めたのです。
i社員: 社長のいうとおりにしていると、売り上げが下がってしまいます。
コンサル: 一般論ですが、新しい商品が導入されると、売上高があがっていくのではないですか。
h社員: 我々の望むような商品が開発されていくのであれば、売上高も上がると思います。
コンサル: 営業が望むような商品が開発されていかないのは、なぜなのでしょうか。
h社員: 我々が、商品提案しても、社長からは、“営業部門でいくら売り上げるのか、残った場合、誰が責任をとるのか”と聞かれてしまいます。最初からリスクの話をされたのでは、我々もやる気を失ってしまいます。数年前までは、営業からの提案も数多くあったのですか、最近は、激減しています。
g社員: 社長だけでなく、社長の商品開発をサポートする商品開発のメンバーも、営業とコミュニケーションをとらないので、市場のニーズとマッチしない、競争力のない商品ばかり開発しています。その結果、不動在庫、不良在庫が増えていると思います。
j事務員: 新しい商品を開発しても、廃棄する商品がないので、商品コードが膨れ上がっています。商品アイテムが増えることによって、営業も物流も、非常に仕事の効率が悪くなっていると思います。
コンサル: しかし、今、話してくれた現場の実態は、社長の耳に届いているのでしょうか。社長の認識では、“現場の意見を聞いている、積極的にコミュニケーションをとっている”という認識ですが。
f社員: 社長が現場で意見を聞くのは、自分の開発した商品の動向です。また、積極的にコミュニケーションをとっていると認識されているのは、社長の言いたいことを伝えているだけです。我々の現場の意見を聞いているわけではありません。
 
 ― 中略 ―
 
 

大変な、社長批判です。他のグループでも、同じように社長批判がありました(社長批判だけでなく・上司批判・他部門批判もありました)。なぜ、このような社長批判になってしまうのでしょうか。
本来、人は一人の人間として認められることを欲しています。社員一人ひとりの意見に耳を傾けることは、社員一人ひとりを一人の人間として認めていることにつながるのです。従って、社員一人ひとりの意見に耳を傾けることが、社員のモチベーションアップの原点なのです。そして、社員との対話を通じて、現場を踏まえた新しい価値が生み出されるのです。
一方、自分のビジョンを持ち、責任感の強いリーダーであればあるほど、自分がすべてを決定して、指示しなければならない、と認識して行動する傾向が強いものです。しかし、それは、正しいリーダーシップではありません。
正しいリーダーシップとは、「部下・同僚・パートナーに対して、自分が所属する組織やプロジェクトの方針やビジョン、戦略を明確に示し、リーダーとして認められることにより、メンバーを目標達成に向け動機づけ動かす行動特性(EMEコンピテンシーの定義 より)」です。B社長は、方針やビジョン、戦略は示していましたが、リーダーとして認められる取り組み、社員を動機付ける取り組みができていませんでした。
A社では、社員意識調査・役割認識調査、そして全社員ヒアリングから、B社長は何に気づき、どのような変革が行われたのでしょうか。次回、報告します。

* *


その5

〜 社員意識調査・役割認識調査を踏まえた今後の展開 〜

コンサルティング物語

コンサルタントはヒアリングの結果を、社員の声として、社長に報告した。コンサルタントの報告に対して、社長の反応は、(声にこそださないが)怒りがあふれていた。同席していた経営幹部は、ただ、下を向いているだけである。


B社長: 私が、これほど情熱をかけて、会社を変革しようとしているのに、なぜ、社員はわからないのか。だれが、このような社長批判をしているのか。問いただしてやりたい。C部長、D部長、E課長、君たちはどう思う。
C営業部長:  
D管理部長: 
E仕入課長:  
コンサル: 社長、だれが、どのような意見を言ったか、ということは、私の口からは、絶対に言えません。社員さんとの約束事ですから。それより、そのような詮索は絶対にしないでください。そのような詮索をすれば、社長と社員の関係は、決定的に悪くなります。
コンサル: 私からは、ほとんどの社員が、報告したような意見を持っていると申し上げます。詮索するよりも、ほとんどの社員が、報告したような意見を持っているという事実を謙虚に受け止めてもらえませんか。
B社長: D管理部長、コンサルタントのいうことは、本当だと思うか。
D管理部長: 正直申し上げて、本当だと思います。社長の想いと現場のとらえ方との乖離は、アンケートでも、ヒアリングでも表れていると思います。
B社長: C営業部長、君からして、私の方針に反しているという意見もあるではないか。どういうことなんだ、それでも、営業部長か!
コンサル: 営業部長を叱っても、報告書にある社員の意見を消すことはできません。少し、休憩をして、社員が報告書のような意見を持つ背景について検討しましょう。
 
 ― 中略 ―
 
コンサル: もう一度、今までの調査の経緯と調査で明らかになった事実を整理しましょう。まず、アンケート形式で社員意識調査をおこないました。その結果、社長の認識と社員の認識に大きなギャップがあることがわかりました。さらに、社員の意識が非常に低いことも報告されました。また、項目別では、「企業理念・ビジョンの浸透」「現場の意見の尊重」「褒められる・認められるの体験」「社内における自己の存在感・ポジショニング認識」「公平な評価」の項目について、社員の認識が低いことがわかりました。
コンサル: 次に、社長と経営幹部との間の役割認識調査をおこない、社長と経営幹部が一枚岩になっているかを調査しました。その結果、社長と経営幹部との間に、大きな認識ギャップがあることがわかりました。
コンサル: そして、会社の現場の声を聴くために、社員さんに対して、ヒアリングをおこなったのです。その結果は、今、報告した通りです。非常に大きな不満があり、その不満が、社員の意識、モチベーションを下げている要因となっています。しかし、私の感想を付け加えるならば、現場の方々も、会社を良くしようと考えています。私に、これだけの声をあげて、訴える力を持っています。私自身、すごいパワーを感じています。このパワーを、このまま放置しておくのは、非常にもったいない。まだまだ、成長するチャンスがあります。
コンサル: C部長。部長が感じている現場の状況をお話し願えませんか。
C営業部長: 営業の現場は、やはり商品を売りたいのです。しかし、社長が考えている商品開発の背景や商品のコンセプトを丁寧に説明してやらないと、営業マンのセールストークにならないのです。商品コンセプトの説明書、試食、それだけで、「戦略商品だから売ってこい」では、営業マンは、どこに売りに行ったらよいのか、どのような商品と組み合わせると良いのか など理解できないのです。
B社長: それを考えるのが営業部長の役割ではないのか。
C営業部長: 私の力不足は認めます。しかし、私も含めて、営業マンは、社長と一緒に売り先を創っていきたいのです。社長に販売の現場にも来ていただきたい、市場の声も聞いてもらいたいと思っているのです。
B社長: 私は私の方法で、市場の声を聞いている。
C営業部長: そのように言われると、どんどん営業マンとの距離が開いてしまいます。
コンサル: 社長、C営業部長は、会社としての一体感を持ちたいと言われているのだと思いますよ。
E仕入課長: 私が、このようなことを言うのは、僭越かもしれませんが、メーカーとの関係も大切にしていただきたい と思うのです。まだまだ、90%以上がNB商品の売上です、メーカーとの関係が希薄になると、販売促進等の支援も受けられなくなってきます。NB商品であっても、市場の情報を提供することによって、我々の意図する商品に変えていくことができるのではないでしょうか。
D管理部長: 社長が、PB商品の開発に集中すればするほど、顧客やメーカー、さらには、社員との関係が開いていくように思うのです。
B社長: 私に商品開発をやめろ というのか。
D管理部長: そうではありません。顧客や社員の声を聞く、あるいは、メーカーと良い関係を維持していくことが、商品開発にも良い影響を与えるのではないでしょうか。
コンサル: 私も、D管理部長の意見に賛成です。今まで、社長に対して、経営幹部の皆さんが、意見を言うことがあったでしょうか。
B社長: 私も正直驚いている。
コンサル: 社長は、非常に責任感の強い方です。将来に対しても、一番危機感を持っていらっしゃる。その責任感の強さや危機感の強さが、かえって、社員との関係、さらには、顧客やメーカーとの関係に、壁を作ってしまったのではないでしょうか。おそらく、経営幹部の方も、言いたくても言える雰囲気ではなかったのだと思います。すると、社長のところに、社内からの情報が入らなくなって、裸の王様のような状態になっていたのだと思います。
B社長: う〜ん。
コンサル: 社員の皆さんは、社長と話をしたがっています。
 
 ― 中略 ―
 
B社長: よしわかった。私自身が、社員全員と話をしよう。今回の意識調査・役割認識調査・ヒアリングの結果を踏まえて、私と経営幹部が一枚岩になることを約束しながら、全社員の心が一つになるために、何をするべきか、社員の意見を聞いてみよう。
コンサル: それは、いいことです。
B社長: 私の認識や理解が不足しているかもしれないので、社員と話をするときは、C部長、D部長、E課長フォローを頼む。
C営業部長、
D管理部長、
E仕入課長:
喜んでフォローさせていただきます。
B社長: ヒアリングの報告を聞いたときは、はらわたが煮えくり返って、頭の中がパニックになっていたが、経営幹部3人の意見を聞いて、かえって、霧が晴れたような気がする。
コンサル: そうですね。怖かったですよ。(笑)
B社長: 社員の意見を聞くにあたって、どのような形で進めたらよいのか、アドバイスがほしい。
 
 ― 中略 ―
 

B社長は、自分が納得したら、行動が早い。次の日から、社員との対話を始めました。対話を始めるにあたっては、自分が社員との距離を広げてきたことを詫びるところからスタートしたのです。B社長の対応は、さすがです。
A社では、社長が社員と対話を始めると、徐々にPB商品が売れるようになってきたのです。社員のモチベーションが、販売に多大な影響を与えることを体感することのできた事例でした。


次回からは、「経営ビジョンを創る」と題して、コンサルティング物語を掲載します。

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