コンサルティング物語

バランス・スコア・カードで企業文化を変える

EME「コンサルティング物語」は、コンサルティングの現場を物語風にアレンジしたものです。
コンサルタントの役割を身近に感じて頂けるように、EMEの新しいチャレンジです。

 バランス・スコア・カードで企業文化を変える


その1

コンサルティング物語

〜 何か食い足りない 〜

J社は、大手健康食品会社K社の販売会社。販売会社といっても、K社との資本関係はなく、独立系の販売会社という位置づけでした。しかし、J社の創業家の引退と共に、J社の歴代の社長は、K社からの出向者が就任することとなり、その結果、独立系販売会社としての独自色も薄れ、K社の意向(あるいは出向社長の意向)に従順な販売会社となっていました。

弊社に電話を頂いた、J社のL社長も、K社からの出向社長でした。しかし、L社長は、「K社の販売会社、特に、独立系の販売会社が、自立していかなければ、いずれ、K社も成長が望めなくなる」という強い危機感を持っていたのです。


L社長:
私は、K社の社員ですが、販売会社が強くならなければ、優良企業といわれているK社であっても、将来はないと思っています。J社に来る前、3年間、M社というK社と資本関係のある販売会社の社長をしていました。3年前に、バランス・スコア・カード(以下、BSC)のことを知り、いろいろなセミナーに参加して、“これはM社の経営革新に使えそうだ”とBSCの導入を決めたのです。そこで、2年前から地元の会計士さんに依頼をして、 幹部社員と一緒にプロジェクトを組んで、BSCの導入に取り組んだのです。そして、昨年から、年度方針をBSCに基づいて発表し、BSCの数値目標をマネジメントする体制に切り替えました。

コンサル:

その結果、いかがでしたか。

L社長:
昨年は、部門長が、今まで意識をしていなかった戦略目標の数字を意識するようになり、業績は向上しました。数字があがると、部門長のモチベーションもあがり、社内の雰囲気も良くなってきました。

コンサル:

素晴らしい、BSCの成果ですね。

L社長:
ところが、今年に入って、第一四半期は、昨年の好調を維持したのですが、第二四半期から、少し雲行きが怪しくなって、BSCの数値目標を達成できなくなってきたのです。“これからが、君たちの成長の真価が問われる時だ”と部門長にハッパをかけていた矢先に、J社への異動の話が持ち上がり、独立系の販売会社の建て直しを請け負うことになったのです。

コンサル:

それは、心残りですね。ところで、J社の印象は、いかがでしたか

L社長:
一言で言うと、皆、一所懸命に働いているのだが、統一感がなく、バラバラ。今期、創業以来、初めて赤字を計上する見込みなのです。

コンサル:

そこで、“BSCで建て直しを図りたい”というご要請と理解してよろしいでしょうか。

L社長:
さっきも話したように、M社への導入では、一定の成果があった。しかし、1年半で、業績の陰りが見えるようになってきている。私には、“BSCを食い足りていない”想いがいっぱいあるのです。御社のHPを見ると、会計士の先生と“BSCに対する考え方や導入の進め方” に、何か違いがあるように感じています。また、一からBSCを導入するのであれば、徹底して導入したいと考えています。

コンサル:
弊社の価値を感じて頂き、ありがとうございます。弊社の考え方の基本は、第一に、“会社は、お客様に選ばれて成り立っている”ということです。K社の健康食品は、お客様がK社の商品を選ぶから、売上という対価を頂いているはずです。従って、“我社は、なぜお客様に選ばれているのか(現在の顧客価値)”、そして、“我社は、将来において、どのような理由でお客様から選ばれたいのか(将来の顧客価値)”を明確にして、将来の顧客価値を創造するために、最強の考え方・ツールとして、BSCの導入を考えていることです。そして、第二には、BSCという仕組みを導入しても、変革する企業文化を醸成しなければ、M社のように、短期的な業績はあがるが、すぐに“元の木阿弥”となると認識しています。従って、プロジェクト・メンバーが、変革の企業文化を醸成するリーダーとなるように、BSC導入プロジェクトを推進することです。

L社長:

会計士の先生は、将来の戦略目標や重要成功要因、評価指標や数値目標を創ることが中心だった。

コンサル:
将来の戦略目標や重要成功要因、評価指標や数値目標を創ることは、とても大切なことです。決して、会計士の先生のお考えが、間違っているわけではありません。ただ、BSCの導入だけを目的とするのではなく、BSCを導入する“変革の基盤”として、“顧客価値の明確化”と“変革の企業文化の醸成”を最も重要視している、と言いたいのです。
L社長:
私が、“BSCを食い足りていない”という想いは、“社員の心に火がついていない”、BSCに対して、現場では“やらされ感”が強い、という問題意識が底辺にあるようだ。
コンサル:
“やらされ感”では、変革は起きません。自らが考え、主体的に動くためには、変革に対する考え方や道具が要るのです。その最強のツールがBSCと考えています。また、“やらされ感”を払拭するためには、まず、プロジェクト・メンバーから、“自らが考え、主体的に意見を出し合い、合意していくプロセスを学ぶ”ことが重要です。そのために、コンサルタントは、プロジェクトを推進するファシリテーターであり、一緒に考え、悩む、パートナーでもあります。従って、弊社では、コンサルタントを先生と呼ばないようにお願いしています。
L社長:
なるほど、先生の言わんとすること、先生の役割が分かってきました。ぜひ、プロジェクトをスタートさせたい。

コンサル:

まず、L社長から、先生と呼ぶのを止めて頂けますか(笑い)。


このようにして、J社における、BSC導入プロジェクトがスタートしました。まず、市場・顧客、競合他社、そして、我社の関係性から、“我社は、なぜお客様に選ばれているのか”、現在の顧客価値を分析します。どのような答えが導き出されたのでしょうか。


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その2

コンサルティング物語

〜 それは、メーカーの強み(魅力)ではないか 〜

BSC導入プロジェクトがスタートしました。プロジェクトチームを2つのチームに分け、それぞれのチームで対話した内容を、発表して統合する、というやり方で検討を進めています。企業文化を変革するためには、この対話ノウハウの習得も重要な研修テーマです。

そこで、プロジェクトを始めるあたり、最初に対話が促進される「安心の場」を創造するために、4つのルールを決めます。(1)相手の意見を批判しない。(2)意見の質より量を重視する。(3)自分の意見・質問を言う。(4)意思決定に参画する。コンサルタントは、このルールを守って対話が促進されるようにプロジェクトを支援します。

プロジェクトのスタートは、現状認識の共有化です。現状認識の共有化は、自社―市場・顧客―競合他社に関する認識から始まります。最初は、我が社の歴史の振り返りから。成長していたときの状態・要因は、どのようなものだったのでしょうか。また、停滞したときの状態・要因は、どのようなものだったのでしょうか。


コンサル:
我が社の歴史を振り返って頂いていますが、成長期はいつごろからいつごろまでと考えれば良いのでしょうか。そのときの会社の状態・あるいは成長してきた要因をどのようにまとめられましたか。また、停滞した時期と状態は、どのような内容でしたか。Aチームさんの発表からお願いします。
チームA:
成長期は、会社ができて、○○年頃までと考えています。そのころは、新しい健康食品を販売するのに、全社が一致団結していたと思います。何しろ、今までになかった商品ですから。それと、販売するために、いろいろと工夫をしました。健康教室や工場見学は今でも続いています。今では、マンネリ気味ですが。停滞している時期は、△△年頃から今です。競合他社が同様の商品を発売した結果、我社の有意性が薄れてきたと思います。この頃、経営会議の内容は、売上・利益の数字の検討が主体となっていきました。販売のための工夫もマンネリ化してきました。

コンサル:

では、Bチームさんの発表をお願いします。


‐ 略 ‐


コンサル:
Aチームの発表とBチームの発表では、少しギャップがありますね。この、ギャップがあることに気づくことが大切です。では、Aチームの検討内容を軸に、意思統一を図りましょう。Aチームの発表に対して、Bチームで対話された内容で、Aチームに追加すること、質問することはありませんか。

チームB:
Bチームの対話では、Aチームの内容に加えて、成長しているときは、お客様と距離が近かったという認識で一致しています。社員間や販売員さんともよく話をしましたが、それ以上に、お客様との対話も多かった。健康教室など、初めてすることばかりだったので、とにかくお客様の声を聴いた記憶があります。また、停滞した時期は、K社からの出向社長が続いたのですが、何事もトップダウンで決められていました。販売員さんの退職率も高くなりました。

コンサル:

今のBチームの意見に対して、Aチームの意見はいかがですか。

チームA:

私たちの気づかなかったことをBチームに教えてもらいました。Bチームの意見に賛同します。


このようにして、わが社の歴史、我が社の現状、市場・顧客の認識、競合環境の認識と対話を進めていきました。最初は、自分の意見を言うことに抵抗のあった年配のメンバーや評論家的な発言が多かった年配のメンバー(トップダウンのリーダーシップを無意識のうちに受け入れる習慣ができていたのですね)も、付箋に自分の意見を記述してから発言する、あるいは、対話の内容を「見える化」する 等の取り組みから、少しずつ主体的に発言して頂けるようになりました。
次は、市場・顧客と自社との関係性、あるいは競合他社との関係性の中から、「我が社は、なぜお客様から選ばれているのか」「お客様が、我が社を選ぶ魅力は何なのか」を検討する場面です。



コンサル:
それでは、「我が社が、お客様から選ばれている理由」について、優先順位を含めて、発表して頂けますか。では、Bグループから。
チームB:
私たちが選ばれている理由としてまとめた結果は、(1)健康に良いから、(2)おいしいから、(3)容量がちょうど良いから、(4)宅配してくれる(買いに行かなくてもすむ)から、(5)子供に飲ませたいから、の5項目になりました。

コンサル:

では、Aグループの意見はいかがですか

チームA:
Aチームの発表をします。Aチームでは、(1)健康に良いから、(2)信頼がおけるから、(3)おいしいから、(4)宅配してくれるから、(5)飲みきりサイズでちょうど良いから の5項目になりました。
コンサル:
なるほど、Bチームには、(5)子供に飲ませたいから、が入っていますが、Aチームには、(2)信頼がおけるから、が入っていますね。ところで、一つ質問です。皆さんが、整理された [1]健康に良いから、[2]おいしいから、[3]容量がちょうど良いから 等の理由は、J社の選ばれている理由でしょうか。私には、メーカーであるK社が選ばれている理由に思うのですが、いかがですか。

チームA:

そういえば、我が社が販売しなくても、K社の商品だったら、売れそうな気がする

チームB:
確かにそうだ。そうすると、我が社には魅力がないということか? 宅配をしてくれるという理由も、我が社の強みと思えないし・・・
コンサル:
K社の商品を扱っているから、お客様は我が社を選んでいる、というのは事実でしょう。しかし、それだけで、お客様は、我が社から健康食品を購入されているのでしょうか。私には、何か大切なことを、皆さんが忘れているように思います。一度、実際にお客様に、我が社から購入するメリットについて聴いてみましょう。次回までに、一人当たり5人のお客様に、我が社から購入されるメリットについて聴いてきてください。

こうして、プロジェクトメンバー一人一人が、5人のお客様に、実際にJ社を選んでいる理由について、聴いてくることになりました。どのような結果になったかは、次回ご報告します。お楽しみに。


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コンサルティング物語

その3

〜 我々の考えとお客様の考えが違っていた 〜

「ここまで、販売員さんのウエイトが高いとは気がつきませんでした。」 お客様が我が社を選ぶ理由について、ヒアリングを行った結果に対する、プロジェクトメンバーの感想です。ヒアリング結果は、どのような内容だったのでしょうか。


コンサル:
お客様へのヒアリングの結果はいかがでしたか。ヒアリングの結果について、チーム毎に、1) ヒアリングした感想について、意見交換をしてください。2) 上位5項目を抽出して発表してください。(チーム対話)
では、ヒアリングした感想とともに、Aチームから発表願います。
チームA:
では、Aチームから発表します。先に、5項目を発表します。1) 販売員さんの人柄 2) 販売員さんが定期的に来て頂ける(買い忘れがない) 3) 販売員さんとのコミュニケーション(子育ての話、ご主人の健康の話、地域の話 等) 4) 健康に良いから 5) 販売員さんが地元の人だから その他として、販売員さんが持ってくる情報、昔から飲んでいるから、美味しいから、毎日飲むのに適量 等の意見がありました。驚いたのは、販売員さんに関することばかりでした。これほど、我が社を選ぶ理由として、販売員さんの影響力が強いとは、考えても見ませんでした。

コンサル:

では、Bチームの整理した結果は、どのような内容になりましたか。

チームB:
BチームもAチームと似たような結果です。1) 販売員さんの人柄 2) 販売員さんが身近(地元の人、年齢層・立場が同じ、共通の悩みがある 等) 3) 販売員さんが定期的に来て頂ける(買い忘れがない) 4) 健康に良いから 5) 販売員さんが持ってきてくれる情報 その他として、販売員さんが話し相手になってくれる(お年寄りのお客様)、昔から飲んでいるから、美味しいから 等の意見を頂きました。感想は、全くAチームと同じです。お客様が、販売員さんの人柄やコミュニケーションで選んでいるとは、薄々気がついていたのですが、重要視してこなかったと思います。
コンサル:
ここで、少し整理しましょう。ジョハリの窓をご存知でしょうか。ジョハリの窓は、もともと心理学において、自己を振り返るための考え方です。縦軸に「自分」、横軸に「相手」を設定して、それぞれの軸に「知っている」、「知っていない」をいれたマトリックスを作ります。すると、第一象限は「自分も相手も知っている自分(スムーズなコミュニケーションが期待できる)」、しかし、第二象限は「自分は知っているが、相手は知らない自分」です、また、第三象限は「相手は知っているが自分は知らない自分」です。従って、第二・第三象限の領域で、コミュニケーションギャップを起こしやすい、という考え方です。
この考え方を、自社とお客様に当てはめます。第一象限は、「自社もお客様も理解している自社の魅力要素」です。第二象限は、「自社は魅力と考えているが、お客様は魅力と考えていない(気づいていない)要素」、第三象限は、「お客様は魅力と考えているが、自社では魅力と考えていない(気づいていない)要素」です。前回の「顧客から選ばれている理由」とヒアリングした結果「顧客が選んでいる理由」から、4つの象限に整理してください。(チーム対話)
では、整理した結果、気づいたことを発表してください。
チームA:
お客様が選んでいる理由は、ほとんどが販売員さんに関することです。販売員さんの退職率が高まると、売上が下がるということは、みんな理解していました。しかし、お客様の選ぶ理由が販売員さんの人柄だとかコミュニケーション能力とは気づきませんでした。
チームB:
我々の考えている「選ばれている理由」とお客様が「選んでいる理由」と一致しているのは、「健康に良いという項目」「宅配をしてくれる」という項目でした。しかし、「宅配をしてくれる」という項目も、我々は機能的に考えていましたが、お客様のニュアンスは、商品を持ってきてくれるということに加えて、定期的に販売員さんが来てくれる、という感じでした。

コンサル:

ここからは、自由に意見交換をしましょう。

メンバーa:

なぜ、我々が考えていた「信頼がある」「美味しい」が選ぶ理由となっていないのでしょうか。

メンバーb:

お客様にとって、「信頼がある」「美味しい」は当たり前で、選ぶ理由とはならないのではないか。

メンバーc:

ヒアリングに行くと、褒めるのは販売員さんのことばかり。チョット、嫉妬しましたね(笑い)

メンバーd:
販売員さんの人柄と発表では言っていますが、実際には、○○さんがきてくれるから、という個人名なのです。人と人とのつながりということでしょうか。

メンバーe:

販売員さんによって、選ばれているのに、俺たちは、販売員さんに文句ばっかりいっているなぁ。

メンバーf:

販売員さんも、私たちに文句ばっかり言っていますよ。

メンバーg:

最近の業績が悪いのは、販売員さんの退職率が高くなっていることと相関しているのですね。

メンバーh:

販売員さんのケアをしていないからなぁ。教育も真剣にしてきたか、心配になってきた。

コンサル:
もう一点、皆さんとお客様と、大きな認識ギャップがありましたが、この点については、どのように考えますか。

メンバーa:

つくづく、お客様のことを理解していないと思いました。

メンバーb:
前々回にも議論したけど、以前は、もっとお客様との距離が近かったのではないか。もっと、お客様のところにも訪問していたような気がする。

‐ 以下略 ‐


このようにして、J社では、「販売員さんがいること」が我が社の魅力に繋がっていること、また、「販売員さんまたお客様とのコミュニケーションの大切さ」に気づきを深めていったのです。

ここで、次の疑問が起こりました。販売員さんの退職率が増えているとはいえ、お客様から選ばれる販売員さんがたくさん所属しているのはなぜだろうか、という疑問です。

この疑問については、次回、検討を深めていきます。


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コンサルティング物語

その4

〜 コーポレートスローガンを創る 〜

「販売員さんが自社の強み」だと気づいたプロジェクトメンバーは、販売員さんに対して、「J社で仕事をしている魅力」について、ヒアリングを始めました。すると、在職年数の長い販売員さんからは、「お客様が(わたしが訪問するのを)待っているから続けている」「お客様のところに行くことが楽しみだから続けている」、あるいは「(自分の子供と同年代の)お客様の子供さんの成長を楽しみにしている」等のヒアリング結果が返ってきたのです。
コンサルタントは、ヒアリングした結果について、今回もAチーム、Bチームに分かれて話し合ってもらうことにしました。


コンサル:

それでは、話し合った結果について、発表していただけますか。

チームA:
販売員さんへのヒアリングを行って、気づいたことは、1) 長く続いている販売員さんは、お客様と良い人間関係を構築している、2) お客様のことを、本当に良く知っている、3) お客様に対して、地域の情報を提供したり、新聞の切抜きを持って行ったり、きめ細かい対応をしている、4) お客様から、新たなお客様の紹介も多い、5) 結果として、売上が上位にランクされている、とにかく、我々の健康食品を販売しているから、働く環境が良いから、長く続いているのではないことが判りました。
チームB:
Bチームも、Aチームと同じ意見です。加えるならば、6) 長く続いている販売員さんは、販売員さん同士も仲が良いです。また、7) 長く続いている販売員さんは、聴き上手の方が多い。だから、お客様に持っていく情報も、豊富になるのではないでしょうか。残念なのは、販売員さんとお客様との関係に、我々が、鈍感になっていたということです。業績が良かった頃の「お客様との距離が近い」という状態を、販売員さんがちゃんと維持していてくれたのです。
コンサル:
Aチーム、Bチームとも、何か、目から鱗が落ちたような気づきですね。メンバーの方で、補足する意見はないですか。
メンバーa:
我々と販売員さんの関係は、販売員さんとお客様との関係に比べて、程遠いことを実感させられました。
メンバーb:
販売員さんがお客様と良い関係を築けるような研修をやってきたのか、とても疑問になってきました。
メンバーc:
私は、託児所を設けている、休みを取りやすい等 家庭の主婦が働きやすいような環境を創っていることが、長く続いている理由だと思っていました。

‐ 中略 ‐

コンサル:
それでは、今までの議論を踏まえて、我が社は、どのような会社を目指すべきなのでしょうか。それぞれ、3年から5年後の「理想とする会社像」を付箋に書き出して、チームとしてまとめてください。そのうえで、我々の理想とする会社像を一言で表すと、どのような言葉で表現できるでしょうか、我が社のコーポレートスローガンを創ります。

‐ 中略 ‐

コンサル:

どのようなコーポレートスローガンが生まれましたか。

チームA:
1) お客様と販売員さんと我が社の距離の近い会社。2) 販売員さんが安心して働ける会社、3) お客様と販売員さんと我が社の間で情報があふれている会社、このような案がでてきました。
チームB:
1) お客様と販売員さんと我が社とコミュニケーションの良い会社。2) お客様のこと、販売員さんのことを知っている会社。3) 地域で認められている会社、4) お客様と販売員さん、販売員さんと我が社が信頼関係で結ばれている会社、このような案に整理されています。
コンサル:
Aチーム、Bチームとも、お客様・販売員さん・我が社の関係を大切にされているようです。では、お客様・販売員さん・我が社の位置関係は、どのような関係になるのでしょうか。まず、図示してみましょう。

‐ 中略 ‐

コンサル:
お客様・販売員さん・我が社を結ぶ、コミュニケーションや情報もキーワードでしたね。地域密着という観点も含めて、どのようなコミュニケーションができればよいでしょうか。
メンバーd:
我々がお客様・販売員さんのことを知ることは重要だけれども、我々のことも知ってもらわないといけないのではないか。

メンバーe:

コミュニケーションは、お互いに双方向だと思います。

メンバーf:
コミュニケーションは、お客様・販売員さん・我が社の関係だけだろうか。我が社の内部、販売員さん同士、地域密着を考えれば、お客様同士のコミュニケーションも考えるべきではないか。

メンバーg:

だったら、コミュニケーションの輪ができることが理想だと思う。

メンバーh:
コーポレートスローガンとして、「知る・知ってもらうの輪」というのは、どうだろうか。

メンバーa:

コミュニケーションが重要なのだから、輪も話に変えてしまおう。

‐ 中略 ‐


このようにして、J社のコーポレートスローガン「知る・知ってもらうの話」が決まりました。

このあと、J社では「知る・知ってもらうの話」を軸として、経営ビジョン、バランス・スコア・カードの構築へと議論が展開されたのです。バランス・スコア・カードへの展開の様子は、次回ご報告します。


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コンサルティング物語

その5

〜 あるべき姿を検討する 〜

プロジェクトチームは、コーポレートスローガン「知る・知ってもらうの話(わ)」を軸に、3年後の「経営ビジョン」の策定を行いました。


コンサル:
「知る・知ってもらうの話(わ)」を行うことによって、我が社は、どのような価値(お客様から選ばれる理由)をお客様に提供できるようになるのでしょうか。そして、そのような価値を提供するために、我々は、何をしなければならないのでしょうか。再び、AチームとBチームとに分かれて検討してください。

‐ 中略 ‐


チームA:
Aチームが考えたお客様への価値は、「○○さんに来てもらいたい。」という、「お客様から名前で指名される販売員さんを育成すること」だと考えました。そのために、我々は、販売員さんとのコミュニケーションの密度を高めていく、さらに、販売員さん相互のコミュニケーションの密度を高める仕組みを創ることだと考えました。
チームB:
Bチームが考えたお客様への価値は、商品を飲んで頂く「体の健康」だけでなく、販売員さんとのコミュニケーション、我々とのコミュニケーション、そして地域の人たち同士のコミュニケーションを通じて、「心の健康」を提供すること、と考えました。我々は、Aチームから発表のあった「販売員さんとのコミュニケーションの密度を高めること」に加えて、地域に集うものとして、お客様と我々との直接的なコミュニケーション、あるいはお客様同士のコミュニケーションを促進する仕組みが必要だと考えました。
コンサル:
なるほど、コミュニケーションを「心の健康」と捉えたわけですね。「心の健康」について、Aチームの方、ご意見はありませんか。
メンバーa:
「心の健康」という捉え方は良いですね。それと、お客様同士のコミュニケーションとは、我々のグループでは気がつきませんでした。
メンバーb:
「地域に集うものとして」という表現も気に入りました。「地域密着、地域に愛される『話(わ)が社』」というイメージですね。
メンバーc:
Aチームでは、販売員さんの価値に着目しました。販売員さんの価値を表現したものが、「お客様から名前で指名される販売員さん」です。販売員さんの価値は残したいと思います。

コンサル:
それでは、Bチームからの意見はありませんか。
メンバーg:
お客様、販売員さん、我々の三者のコミュニケーションが「心の健康」を提供すると考えましたが、その中心は販売員さんですね。我が社は、良い販売員さんの存在で選ばれていたのですから。
メンバーh:
我々が、どこまで真剣に販売員さんと話ができていたのか、反省させられます。
メンバーi:
販売員さんの定着率が良いと業績が良くなることは、わかっていたはずなのに・・・、なぜ、できなかったのだろうか。
メンバーj:
我々と販売員さんだけでなく、我が社の中でも、どこまでコミュニケーションが取れているのか、疑問です。

コンサル:
それでは、Bチームの発表を軸に、今までの議論を整理しましょう。ターゲット(誰に)は、地域の生活者の方々。そして、顧客価値(何を)は、商品による「体の健康」に加えて、コミュニケーションが創造する「心の健康」。その中でも、良い販売員さん、その方々の存在が顧客価値になる。さらに、提供方法(どのようにして)は、お客様・販売員さん・我々のコミュニケーションの仕組みや良い関係性を構築していくこと。このようなまとめで良いですか。

‐ 中略 ‐


コンサル:
J社の「経営ビジョン」が整理されました。そこで、次の検討内容です。一つは、この「経営ビジョン」が実現された、J社の3年後の姿を具体的にイメージしてください。売上高、利益額、社員数、販売員さんの数、定着率、顧客数 等です。二つ目は、このようなJ社の「あるべき姿」を実現するための「重要課題」を抽出してください。「重要課題」を抽出する際、(1)お客様との関係 (2)J社が価値を提供する仕組み (3)我々の能力・ノウハウ (4)我が社のこだわり (5)その他 の視点から 検討してください。

J社では、このようにして、「あるべき姿」とあるべき姿を実現するための「変革課題」が抽出されました。そして、いよいよ「変革課題」を解決するために、バランス・スコア・カードを構築する場面となります。バランス・スコア・カードの構築のポイント、特に、企業文化の変革との関係性については、次回、ご報告します。



コンサルティング物語

その6

〜 新しい価値観を浸透させる 〜

J社では、「あるべき姿」を実現するための「変革課題」を解決するために、バランス・スコア・カードの内容を議論することになりました。


コンサル:
バランス・スコア・カードの内容を検討しますが、バランス・スコア・カードの検討内容について、再度、整理しておきましょう。バランス・スコア・カードは、顧客から選ばれ続ける企業を創るために、(1)顧客・市場との信頼関係をどのようにして構築するか(顧客の視点)、(2)価値創造する仕組みをどのようにして構築するか(業務プロセスの視点)、(3)組織能力・個人能力をどのようにして高め、発揮するか(学習と変革の視点)、(4)経営理念・経営ビジョンをいかにして浸透・実行するか(リーダーシップの視点)、(5)盤石な財務体質をどのようにして実現するか(財務の視点)、について、バランスの取れた意思決定を行う「戦略プログラム」です。(注:EMEでは、通常の4つの視点に加えて、リーダーシップの視点を追加しています)
さらに、視点毎に、戦略目標・重要成功要因(重要課題)・評価指標・数値目標・活動項目を明確にすることによって、戦略目標の実現を担保するものです。特に、評価指標・数値目標を設定することにより、バランス・スコア・カードの進捗状況を管理していきます。
それでは、まず、「顧客の視点」から検討を進めます。再び、Aチーム・Bチームに分かれて頂いて、戦略目標・重要成功要因(重要課題)・評価指標・数値目標まで、検討を進めてください。ポイントは、「我々が考えている顧客価値(“体の健康”に加えて“心の健康”)を、いかにしてお客様に伝えて、どのような評価を頂くか」を明確にして、実現するプログラムを構築することです。

‐ 中略 ‐

コンサル:
次に、「業務プロセスの視点」です。検討のポイントは、「我々が考えている顧客価値を、どのようなプロセスで創造するか」を明確にすることです。さらに、「新しい顧客価値を創造するためには、新しい活動が必要となります。そのために、今の活動をいかに効率化するか」もポイントとなります。

‐ 中略 ‐

コンサル:
次に、「学習と変革の視点」です。検討のポイントは、「我々が考えている顧客価値を創造するために、組織能力をいかにして高めるか」を明確にすることです。特に、個人の能力向上も必要ですが、組織として能力を高め、発揮する仕組みを、どのようにして構築するか」がポイントとなります。

‐ 中略 ‐

コンサル:
次に、「リーダーシップの視点」です。リーダーシップの視点は、理念共同体である中小企業においては、なくてはならないものです。長寿企業においては、「家訓・理念を守る企業が90%以上である」(NHK「日本の長寿企業」より)ことからも、中小企業において、経営理念の浸透の重要性が指摘されるところです。リーダーシップの視点における検討のポイントは、「経営理念・経営ビジョンをいかにして浸透させ、社員の行動として具現化する仕組みを創るか」、さらに「企業文化として定着するように、経営理念・経営ビジョンに基づく行動を、いかにして習慣化させるか」を明確にすることです。Aチーム・Bチームに分かれて対話をお願いします。

コンサル:

如何ですか。それでは、Aチームから発表をお願いします。

チームA:
Aチームの戦略目標は、コーポレートスローガン「知る・知ってもらうの話(わ)」が浸透している状態を創ることです。そのための重要成功要因をグループ毎に、定期的に「知る・知ってもらうの話(わ)」を実現するためのミーティングを行うことだと考えています。さらに、評価指標・数値目標は、このようなミーティングを○○回行うこと としました。
チームB:
Bチームの戦略目標も、コーポレートスローガン「知る・知ってもらうの話(わ)」が浸透している状態を創ることです。ただ、重要成功要因は、グループ毎の定期的なミーティングだけでなく、日々の朝礼でも、「知る・知ってもらうの話(わ)」に関する活動を発表してもらうこと も付け加えました。評価指標・数値目標は、「知る・知ってもらうの話(わ)」に関する活動提案数で考えています。

コンサル:

それでは、いつものように対話によって、価値を足していきましょう。

メンバーa:
Bチームでは、評価指標・数値目標を、「知る・知ってもらうの話(わ)」に関する活動提案数としていますが、社員から活動提案を出してもらうためには、活動提案を出してもらうためのインセンティブが必要なのではないでしょうか。
メンバーd:
インセンティブを準備すると、インセンティブがないと活動しなくなるのではないか。それは、我々のバランス・スコア・カードの趣旨と違うように思う。
メンバーb:
活動提案数というのは、すこしハードルが高い。まず、キチンとグループ毎に話し合いをすることが重要だと考えます。
メンバーe:
グループ毎に話し合った結果を冊子にしてはどうだろうか。そして、全員に配布する。評価指標・数値目標は、冊子の中に記述された活動の数としてはどうか。
メンバーf:
グループ毎に話し合うにしても、リーダーが話し合いをまとめることができるだろうか。リーダー教育が必要なのではないか。
メンバーc:
まず、リーダーに浸透させることこそ重要だと思う。だから、重要成功要因は、リーダーに対する浸透ではないか。そのために・・・

‐ 以下略 ‐


このようにして、J社では、バランス・スコア・カードの視点毎に対話が進められました。私は、バランス・スコア・カードの導入に際して、リーダーシップの視点を非常に大切にしています。いくら、良い仕組みを構築しても、社員の中に、経営理念や経営ビジョンを実現するために、挑戦する意識、変化する意識が醸成されなければ、経営理念も経営ビジョンも絵に描いた餅になってしまうからです。しかし、現実的には、リーダーシップの視点は、一人一人の心の問題・意識の問題ですから、プロジェクトメンバーも対話を避けて通ろうとします。ここに、企業文化の変革の難しさがあります。そこをキチンと対話するように支援することが、コンサルタントの役割です。 また、リーダーシップの視点は、経営者にとっても耳の痛い対話が続きます。この耳の痛い対話を正面から受け止めて、自らを振り返ることのできる経営者が、変革できる経営者なのです。
バランス・スコア・カードの議論の最後の視点は、「財務の視点」です。財務の視点の検討ポイントは、「どのような財務体質の企業を創るのか」を明確にすること、そして、「今までの対話(4つの視点の対話)の結果を、財務的に検証する」ことにあります。

いよいよ、J社のバランス・スコア・カードの検討も、具体的な活動項目を議論する場面になりました。次回は、バランス・スコア・カードの活動項目について、ご報告します。



その7

〜 活動計画に落とし込む 〜

コンサルティング物語

バランス・スコア・カードの実行性を担保して、会社の企業文化を変えていくためには、活動計画の設計が非常に大切です。ここでも、模造紙と付箋が大活躍です。まず、模造紙を横にして16分割します。そして、左から(1)何を(活動項目)、(2)誰が(責任者)、(3)いつ実施するのか(納期)の欄を作ります。残りは、期首の月から期末の月まで記入して、余った最後の欄はメモ用に使います。この模造紙をバランス・スコア・カードの視点毎に準備するのです。
J社においても、まず視点毎に、(1)活動項目、(2)責任者、(3)納期の抽出を行うことになりました。


コンサル:
視点毎に、活動項目、責任者、納期を抽出します。やり方は、Aチームが「顧客の視点」と「業務プロセスの視点」の活動項目、責任者、納期を抽出します。また、Bチームは「学習と変革の視点」と「リーダーシップの視点」と「財務の視点」の活動項目、責任者、納期を抽出します。抽出が済んだら、納期の欄のカードに基づいて、活動内容を付箋に記述して、納期の月の欄に貼ります。これで、活動計画の骨格ができます。まず、ここまでの検討を始めてください。

‐ 中略 ‐


コンサル:
では、AチームとBチームのシート(模造紙)を交換してください。Aチームは、Bチームの創った活動計画に価値を足してください。Bチームも、Aチームの創った活動計画に価値を足します。検討するに当たって、ルールがあります。絶対に、他チームが作成した活動計画を批判したり否定したりしないことです。一方、活動計画に対する修正案や生産的な意見は、付箋に書いてシートにどんどん貼り付けてください。ひたすら、「どのようにしたら、他チームが作成した活動計画を実行可能なものにできるか」について、検討することが重要です。検討は、ア)「他チームの活動項目の責任者、納期が適切か」を検証します イ)活動項目を実行するための準備、あるいはアフターフォローが必要な場合は、付箋に記述して実施する月の欄に貼り付けます ウ)追加で必要だと思う活動項目があれば、責任者、納期も合わせて記述します。大切なことは、相手のチームの活動計画に価値を足すことです。では、始めてください。
(最初は、大いにとまどう)

メンバーa:

他チームが作成したものに手を加えるというのは、ものすごく抵抗がある。

コンサル:
そうですね。一般論ですが、“手を加えること=批判を加えること”と捉えられることが多いからだと思います。だからこそ、批判的あるいは否定的なコメントを書き入れてはいけないのです。あくまでも、実行できるように、前向きなコメントを書き入れてほしいのです。
メンバーb:
この活動項目は、以前もやって、ダメだったのに、Bチームはまたやるつもりなの・・・。
コンサル:
批判や否定はダメです。Bチームが作成した活動項目に対して、以前とは違うやり方を考えてあげてください

メンバーe:

この項目、こんな短期間での実施は無理だよ。

コンサル:

いつだったらできるか、考えてあげてください。

メンバーd:

同じ人ばかり責任者になっている。◎◎さんが、オーバーワークになるよ。

コンサル:

では、誰が適任か、考えてあげてください。

‐ 中略 ‐



相手のアラは良く見えるもので、どうしても批判的になりがちです。しかし、「相手の意見(シート)に対して、批判や否定をしてはいけない」というルールを守ることによって、批判的な議論が徐々に生産的な議論に変わっていくのです。「今の仕事を変革しよう」と言葉で奨励するよりも、相手の活動計画(変革計画)を支援する体験(相手に自分の活動計画(変革計画)を支援してもらう体験)が重要なのです。


コンサル:
では、再びシート(模造紙)を戻してください。Aチームは、Bチームから頂いた価値足しを踏まえて、活動計画の精緻化を行なってください。そして、活動項目に優先順位をつけて、活動項目を絞り込んでください。Bチームも同様です。では、始めてください。
メンバーf:
うわぁ、いっぱい書いてある。やっぱり、他人の足らないところは、良く見えるのだ。
メンバーc:
やっぱり、◎◎さんに責任者が集中していたんだ。この活動項目は、△△さんが責任者として、適任かもしれない。
メンバーa:
なるほど、このやり方をしたほうが、納期が早くなる可能性が高い。
メンバーd:
副責任者を設けるという発想はなかった。たしかに、☆☆さんだけだと、☆☆さんが、オーバーワークになる可能性がある。

‐ 中略 ‐


コンサル:
最後に、全部のシート(模造紙)を壁に貼りましょう。ここからは、全員で検討します。検討する視点は、責任者が誰かに集中していませんか、特定の月に活動が集中していませんか、実行月までの準備やアフターフォローは充分ですか、などなど です。そして、プロジェクトメンバーには、責任者に名前があがっているメンバーも含めて、すべての活動項目に対して、サポーターとして関与して頂きます。
メンバーc:
やっぱり、◎◎さんに責任者が集中しすぎているのではないか。
メンバーd:
我々が、サポートすれば大丈夫だろう。やっぱり、人望のある◎◎さんに大切な活動の責任者をやってもらいたい。
メンバーa:
活動項目が、4月5月に集中しすぎている。これでは、物理的に実行が難しい。
メンバーe:
それでは、※※と**を半年遅らせて計画してはどうだろうか。

‐ 以下略 ‐


活動計画の検討で用いている「価値足しの手法」は、変革を認める文化、変革を支援する文化を醸成するために有効な取り組みです。そして、さまざまな場面で応用が可能です。「価値足しの手法」と「ワクワク会議」を組み合わせる取り組みも行なっています。

このようにして、J社では、バランス・スコア・カードの活動計画が決められていきました。いよいよ次回は、このシリーズの最終回、バランス・スコア・カードのマネジメントについて、ご報告します。


その8

〜 バランス・スコア・カードの浸透とマネジメント 〜

コンサルティング物語

J社では、活動計画の検討における、「価値足しの手法」の体験を契機に、プロジェクトメンバーの間で、お互いに支援する雰囲気が醸成されてきました。そして、活動計画については、自分たちでできる活動から、プロジェクトメンバーが中心になって、取り組みが始まったのです。いよいよ、あるべき姿の実現に向けて、バランス・スコア・カードの活動プログラムを実行していく段階です。
しかし、この段階においても、二つの問題を解決しなければなりません。一つ目の問題は、“バランス・スコア・カードプロジェクトで決めた内容を、どのようにして社内に浸透させていくか”という問題。二つ目の問題は、“バランス・スコア・カードの進捗状況をどのようにして、マネジメントしていくか”という問題です。


コンサル:
いよいよ、バランス・スコア・カードの内容を全社発表する段階に入りました。次年度の方針発表の日は、◎◎月○○日と決まっていますね。この日に、バランス・スコア・カードの内容を全社に発表して頂くわけですが、バランス・スコア・カードのシートを発表しても、プロジェクトに参加していない社員には、内容がうまく伝わりません。そこで、バランス・スコア・カードの内容を浸透させるために、皆さんには「シナリオ」を作成して頂きます。演劇の「シナリオ」は、クライマックスに向けた、演劇のストーリーを記述しますが、私の言う戦略の「シナリオ」は、あるべき姿が実現できた状態、いわゆる変革に成功した状態を記述します。したがって、私は戦略の「シナリオ」のことを「成功物語」と呼んでいます(以下、「成功物語」と表現します)。
コンサル:
「成功物語」は、あるべき姿が実現できた状態を記述しますので、記述の仕方は、現在完了形あるいは現在進行形、あるいはあるべき姿を実現するまでのプロセスを記述する場合は、過去完了形で記述します。
例えば、
日々、販売員さんが、お客様の情報を集める活動に取り組んできた。その地道な取り組みによって、今では、販売員さん一人当たり、平均して10枚の情報が収集されるようになっている。その結果、お客様からは、“J社の販売員さんは地域のこと、私たちのことを最も良く知っている”という評価を頂いている。
という表現になります。
したがって、願望表現(○○でありたい 等)、あるいは予測表現(△△していると思われる 等)は排除してください。
コンサル:
では、まず個人で、成功物語を記述します。成功物語は、「中期の成功物語」と「短期の成功物語」を作成します。個人で作成したら、今度はチームの中で発表して頂きます。さらに、チームメンバーの中から代表的な成功物語を選んで、チームで肉付けします。そして最後に、Aチーム、Bチームの成功物語をL社長にプレゼンして、より“あるべき姿が描かれている”と思う成功物語を採用します。
コンサル:
それでは、個人ワークからチームで成功物語を作成するまで、対話を進めてください。

‐ 中略 ‐


コンサル:
最後に、あるべき姿を実現するために、バランス・スコア・カードの進捗状況をどのようにして、マネジメントしていくか、マネジメント体制を決めていく必要があります。そして、マネジメントする対象は、大きく分けて二つあります。一つは、評価指標で掲げた「数値目標」です。そして、もう一つは、前回まで検討してきた「活動項目」です。そして、J社の企業文化の変革を考えるならば、社員の日々の活動に直結する活動項目をマネジメントすることが重要なのです。
コンサル:
では、最初に、数値目標のマネジメント体制から議論しましょう。Aチーム、Bチームに分かれて、評価指標毎に、(1)管理の目的 (2)管理シート (3)管理頻度 (4)管理責任者 (5)管理場所 を決めてください。
次に、活動項目のマネジメントです。活動項目についても、項目毎に、(1)管理シート (2)管理頻度 (3)管理責任者 (4)管理場所 を決めてください。活動項目のマネジメントで重要なことは、活動項目は仮説だということ。活動項目(仮説)を実行(検証)して、成果の結びつくこと(仮説が検証できたこと)は、どんどん進めていくが、成果に結びつかないこと(仮説が検証できなかったこと)は、さっさとやめて、新しい活動項目(仮説)を作ることが重要なのです。
決めたら、チームごとに発表して、マネジメント体制を整理していきましょう。

‐ 中略 ‐


チームA:
(管理シート等の発表は省略)。Aチームは、管理する場として、数値目標は経営会議・部門会議で行なっていくべきだと考えます。一方、活動項目は、バランス・スコア・カード検討会議を新設して、部門長とプロジェクトメンバーが協議して、進捗管理を行なっていくべきだという結論になりました。
チームB:
Bチームも、なぜか、Aチームと同じ結論です。Bチームでも、バランス・スコア・カード検討会議が必要だという意見でまとまりました。初めてですね、同じ結論となったのは(笑)。これからも、バランス・スコア・カードの進捗に関わっていきたいと考えています。
コンサル:
Aチーム、Bチームの意見を整理すると、このプロジェクトメンバーが、バランス・スコア・カードを育てていくと考えて良いですか。

チームA・チームB: ぜひ、そうしたいです。

コンサル:
では、次回、L社長に、プロジェクトとしての最終プレゼンを行ないます。最終プレゼンですから、(今まで承認を頂いて社内発表されているものもありますが)プロジェクトの集大成として、(1)コーポレートスローガンと経営ビジョン、(2)中期のバランス・スコア・カード、(3)短期のバランス・スコア・カードと活動項目、(4)マネジメント体制 についてプレゼンテーションをしましょう。そして、最後に、我々のあるべき姿に対する意気込みを「成功物語」として、Aチーム、Bチーム、それぞれが発表して、最終評価をL社長から頂きましょう

このようにして、J社のプロジェクトメンバーは、最終プレゼンをL社長に行い、◎◎月○○日に全社発表する予定で、中期ビジョンと中期・短期の戦略を整理していきました。


しかし、晴天の霹靂とは、このことなのでしょう。全社発表の前に、L社長が急死されたのです。J社では、大変な混乱となりましたが、それでも、プロジェクトメンバーの活躍で、新たな出発に向けた、土台作りが進んでいます。
J社では、バランス・スコア・カードの導入によって、プロジェクトメンバー主体、さらに社員主体の企業文化が浸透していきました。ですから、L社長の悲報に対しても、社員が落ち着いて、失礼のないような気配りを行なうことができたのです。以前のような、トップダウン主体の企業文化であったら、社長急死の悲報に対して、どのような対応ができたのか、本当に背筋がゾッとします。

L社長のご冥福をお祈りいたします


「BSCで企業文化を変える」は、今回で修了します。次回からは、「ワクワク会議で組織変革を起こす」をお伝えします。


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